2025年01月24日 1855号
【トランプ政権移行で勢いづくネタニヤフ政権/ガザ、西岸でパレスチナ抹殺≠加速】
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2025年になっても、イスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドは激しくなるばかりだ。病院が、避難所が、わずかに残った建物が爆撃を受け、死傷者は増え続けている。イスラエル軍はアサド独裁政権が崩壊したシリアにも占領地を拡大している。米国のトランプ政権への移行(1/20)に合わせ、シオニストが勢いづいているかのようだ。ジェノサイドをやめろ。植民地支配、アパルトヘイトをやめろ。国際連帯の闘いをさらに強める必要がある。
トランプの脅し
米大統領への就任を前に、ドナルド・トランプは、イスラエルとハマスの停戦協議に警告を発している。「就任宣言(1/20)までに、ガザで拘束されている捕虜が返還されなければ、中東は地獄の報いを受けるだろう=Bハマスにとっても、誰にとっても、よくないことだ」
昨年来続けられているカタールやエジプトが仲介する停戦協議は進展していない。トランプに名指しされたハマスの高官は「ネタニヤフと彼の政府が妨害をやめれば、すぐに合意に達することができると信じている。トランプ次期大統領と彼のチームが、ネタニヤフ政権に圧力をかけ、就任式の前に協議が進展するよう期待する」(1/8ドロップサイトニュース)。責任はイスラエル側にあると言っている。
トランプ政権がパレスチナ問題を人権や国際法に沿って解決を図ることはない。トランプが指名するパレスチナ関係スタッフは、イスラエルの植民地支配やアパルトヘイトを支持する者たちばかりだからだ。国務長官マルコ・ルビオや駐イスラエル米大使マイク・ハッカビー、中東特使スティーブ・ウィトコフ、国連大使エリス・ステファニクはいずれ劣らない親イスラエル派だ。
「パレスチナ人など存在しない」(ハッカビー)と公言してはばからない面々をネタニヤフ政権は歓迎。米政権の交代を機に、パレスチナ国家を前提とした「2国家解決」を葬り去ろうとしているのだ。トランプは大統領選挙の最中には「イスラエルに仕事を最後までやらせるべきだ」と語っている。パレスチナ解放の闘いにとって、極めて重大な事態が生まれかねない。
ガザ 医療は壊滅
実際イスラエル軍は、停戦交渉などないかのように、新年を挟んだ9日間で、少なくとも395人を殺害し、936人を負傷させた。1月8日現在、死者4万5936人、負傷者10万9274人(ガザ保健省)。世界四大医学誌の一つとされる『ランセット』(1/9)は死者はこれより40%以上多いとの調査結果を示している。
すでに、医療機関は機能していない。北部では、昨年暮れに2つの病院が閉鎖命令を受けた。1月3日には、北部最後の病院アル・アウダ病院も閉鎖を命じられた。ハマスの活動拠点との言いがかりだ。国連人権高等弁務官事務所は「(イスラエルの攻撃で)パレスチナ人の医療アクセスに壊滅的な影響を及ぼした」と報告している(12/31)。
発電用の燃料は底をつき、集中治療室や腎臓透析など医療機器が動かない。南部ハンユニスにある欧州ガザ病院、ナセル医療複合施設は相次いで発電機が止まった。薬品用冷蔵庫も保育器も機能しない。数千人の子どもを含む1万2千人以上の重症患者が治療のため国外への移送を待っているが、イスラエルは国境通過を容易に認めない。
子どもたちの冬物衣類キットの搬入さえ、用意された22万キットのうちガザに搬入できたのは、1万9千キットにとどまり、昨年来の新生児の凍死は8人になった(1/6ガザ保健省)。
イスラエル軍は、絶望的な状況を作り出したうえで、ハマスからの離反を煽る宣伝ビラを大量にばらまいている。「ハマスは何年もの間、あなた方を抑圧してきた。ガザの人びとよ。いま復讐の時だ」「ハマスの指導者たちは遠く離れたところでぜいたくな暮らしをしている一方で、ガザの人びとは極度の貧困と飢えに苦しんでいる」
この見え透いたプロパガンダは戦闘が始まった時から続いているものだが、ガザ出身のジャーナリストは15か月の戦闘で「人びとは抵抗に反対し、嫌悪するよう駆り立てられている」と語っている。イスラエルは自らが引き起こしたガザの惨状の責任をハマスに押し付けようとしているのだ。
西岸 日に4件の襲撃
ヨルダン川西岸の状況もパレスチナ人の抵抗の意思を挫く動きが強まっている。
イスラエルの特殊部隊が配達用のバンや救急車を隠れ蓑に利用し、病院を襲い、パレスチナ人を拘束し、殺害している(1/10)。
イスラエル軍による暴行は、入植者によるパレスチナ人襲撃と一体となり、日常的におこっている。特に、23年10月以来、パレスチナ人に家を放棄させることを狙った土地の接収や暴力的な攻撃が急増。24年は1400件。1日あたり4件にもなる。国連が記録を取り始めて最悪の状態になったという。
「パレスチナ人はテロリスト」と決めつけるイスラエル財務大臣スモトリッチは「(西岸地区も)ガザのようにならなければならない」とジェノサイドを示唆する発言をしている。
イスラエル軍は、自治政府の治安部隊も占領政策に加担させている。
自治政府と言っても西岸の20%にも満たない地区でしか、行政・治安の権限を認められていない。大半はイスラエル軍が「代行」している。税の徴収もイスラエルが行い、自治政府に送金するシステムになっており、財政的にも「自治」は形ばかりだ。
自治政府の治安部隊の活動もイスラエル軍の圧力・監視下で行われ、パレスチナ人の団結を破壊する役割を負わされている。
ネタニヤフ政権は、占領に抵抗する勢力を押しつぶそうとしている。ガザからパレスチナ人を一掃し、西岸でもユダヤ人入植地を拡大し、パレスチナ人を追い出し、「大イスラエル」の実現をめざすつもりだ。
成果上げるBDS
困難な中でも非暴力で軍事占領に抗するパレスチナ人民闘争戦線(PPSF)やパレスチナBDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)全国委員会(BNC)など、パレスチナ民衆への支援・連帯がいっそう重要な時だ。国際法違反を繰り返すイスラエルを孤立させなければならない。
世界的に拡がったBDS運動は、多くの成果を上げてきた。24年下半期に限っても、100を超える事案に影響を与えた(https://bdsmovement.net/BDS-Impacts-Second-Half-2024)。
たとえば、昨年11月、52か国が求めたイスラエルに対する即時軍事禁輸措置、イスラム協力機構とアラブ諸国連盟の合同首脳会談で採択されている。植民地支配を知る南アフリカ、中南米などやアラブ諸国だけでなく、西欧諸国の一部でもイスラエルへの武器輸出にストップがかかっている。
目の前で繰り返されるジェノサイドを止め、軍事占領、アパルトヘイトをやめさせるのは、最優先課題だ。
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