2025年01月24日 1855号
【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(13)/1年で1か月半は電力を捨てている九州】
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省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)という法律がある。電力供給予備率(電力の「余裕」)が5%未満となった場合「電力逼迫」注意報が出され、節電が呼びかけられる。
少し前になるが、筆者は2023年度(2023年4月〜2024年3月)の電力需給に関する貴重な資料を入手した。国内10電力会社が省エネ法に基づいて公表した電力逼迫時間数をまとめたものだ。電力逼迫とは逆に、電力過剰による停電を防ぐため、意図的に発電を制限する「出力制御」が行われた時間も示されている。
驚かされるのは、10電力すべてで電力逼迫時間が全くなかったことだ。個別の電力会社ごとに見ると、人口が集中する東京電力管内など厳しい地域はあったかもしれない。だが「電力広域的運営推進機関」(2015年設立)が現在は24時間体制で全国の電力需給状況を監視している。電力が逼迫している電力会社管内に、余裕のある電力会社管内から送電する体制が確立されているのだ。
電力会社ごとの出力制御時間は、北海道7・5時間、東北109時間、中部100・5時間、北陸96時間、関西4・5時間、中国464時間、四国253時間。東京、沖縄両電力管内では出力制御は行われなかった。そして、衝撃的な数字が出たのが九州電力管内だ。なんと1142時間にもわたって出力制御が行われていたのである。他の電力会社すべてを合計しても1166時間だから、九州電力管内だけで全国の半分を占めている。1142時間を日数換算すると47・6日、1か月半に相当する。
今の日本のルールでは、電力過剰となった場合、送電網には原発の電力が優先的に流され、出力制御を受けるのは再生可能エネルギー(再エネ)となる。再エネ由来の電力がこれだけ捨てられているのだ。
送電を再エネ優先に改めた場合、どのような変化が起きるのか。それを見るのに手っ取り早い地域がある。北海道では2012年以降、泊原発が稼働せず、太陽光、水力など再エネが順調に拡大している。2023年10月における道内の再エネ電力比率は40%にも及んだ。日照時間は北半球では南に行くほど長い。日本で最も日照時間が短い北海道でこれだけ再エネへの転換が進んでいるのだ。太陽光のポテンシャルの高い関西、四国、九州電力管内では、できないほうがむしろおかしい。
このデータから見えてくる事実がもう一つある。他地域から電力融通を受けられない沖縄を別とすれば、出力制御が行われなかったのは東電管内だけ。電力不足などしょせんは首都圏だけの問題に過ぎないということだ。西日本と異なる周波数(50ヘルツ)のため電力供給基盤が弱い首都圏に人口が集中しすぎている。政府は原発再稼働に使う労力があるなら、東京一極集中の是正に取り組むべきだ。
(水樹平和)
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