2025年02月07日 1857号
【BDS運動 ネタニヤフ政権に圧力/停戦合意からパレスチナ解放へ】
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パレスチナ・ガザ地区での停戦合意が発効(1/19)した。イスラエルのネタニヤフ首相はその前日「停戦は一時的。戦闘再開の権利があることを米政府は支持している」と強がっているが、間違いなく追い込まれている。
昨年5月末、バイデン大統領が示した停戦案を一蹴したネタニヤフ政権が、今回、ほぼ同じ停戦案を受け入れた。就任目前のトランプと自らの「手柄」にしたかったとしても、戦闘を永続化したいネタニヤフには不本意だったはずだ。
ネタニヤフが停戦に応じざるをえなかったのはなぜか。昨年6月以降の情勢の変化をふり返って見よう。
バイデンの停戦案は6月10日の国連安全保障理事会で採択された。7月、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルの占領政策は国際法違反、入植活動停止は義務とする勧告的意見を国連総会に提出。9月、国連緊急特別会合で124か国がイスラエル制裁決議に賛成した。11月、国際刑事裁判所(ICC)はネタニヤフを戦争犯罪の被疑者として逮捕状を出した。
ネタニヤフは国際手配の犯罪人となり、イスラエル自体の信用が失墜した。
経済危機招く戦闘
国際的な信用失墜はイスラエル経済に危機的状況をもたらし、ネタニヤフへの大きな圧力となった。
昨年5月、イスラエルの著名な経済学者130人が、「政府の政策がイスラエルの存在を危機にさらしている」と警告する公開書簡をだした(5/28イスラエル経済紙GLOBES)。戦闘継続のための予備役や軍事費の負担により、有能な人材ほど国外流出が起きている。政策変更がなければ、流出はさらに加速し、国家は崩壊すると指摘している。
「イスラエル崩壊まで4年しかない」(経済学者ダン・ベン・ディビッド)とまで言われている。イスラエルの債務は昨年下半期に約3400億ドル(約53兆円)に急増。信用格付け会社ムーディーズはイスラエル債の格付けを2段階引き下げ「ジャンク債」(債務不履行の可能性)に近い扱いにした。イスラエルは高額な金利支払を迫られることになる。
イスラエル経済の悪化を懸念し、半導体素子製造企業世界最大手のインテルは昨年6月、ガザ近郊で計画していた250億ドル(約3・8兆円)の建設プロジェクトを中止した。インテルはイスラエルの支援企業の一つながら、経済的リスクを避けたということだ。
「貿易環境 変えた」
イスラエル経済が崩壊に向かっているのは戦争政策の結果ではあるが、BDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)運動の成果でもある。「BDSとボイコットはイスラエルの世界貿易の環境を変えた」とイスラエルの大手経済紙がイスラエル輸出協会会長のインタビューを伝えた(9/18CTECH)。「経済ボイコットとBDS諸組織が大きな課題を突き付けており、一部の国では、目立たぬように活動することを余儀なくされている」
ロイターは、「ヨーロッパ最大の金融機関のいくつかが、イスラエル企業やイスラエルとつながる企業との関係を断ち切っている」とし、その背景に「活動家や政府からのガザ戦争を終わらせるための圧力が高まっている」ことをあげた(11/5)。BDS運動の成果であることを証明したものだ。
実際、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府ファンドは、昨年12月3日、イスラエル最大の通信会社であるベゼクの全株式を売却すると発表。「ヨルダン川西岸入植地へのサービス提供が入植地の維持・拡大に貢献している」ことがその理由だ(12/5ロイター)。
格付け会社S&Pはイスラエルへの直接投資額が、22年GDPの2・4%であったのに比し、25年はマイナス1・5%と予測している。投資引き揚げが起こっているのだ。
ジェノサイドに加担
いま日本の年金積立金が問題になっている。イスラエル国債やイスラエル軍需企業関連株に1兆円が投資されているとして、厚労省やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に対し、引き揚げ要請の行動が取り組まれている。
昨年8月、英国最大の民間年金基金である大学退職年金制度(USS)は、イスラエル債を含むイスラエル資産8000万ポンド(約155億円)を売却している。この決定には、大学ユニオンからの圧力が大きな役割を果した。ノルウェー、デンマークの年金基金の投資引き揚げに続き、「世界的な退職基金の引き揚げの波に加わった」(8/8フィナンシャルタイムス)。日本からも続こう。
パレスチナBDS全国委員会(BNC)は、「BDS運動にさらなる力を入れ、世界中から大規模な圧力をかけること―それこそがイスラエルによるジェノサイドに終止符を打ち、アパルトヘイトを解体するために闘争を続けるパレスチナの人々と連帯する道」と呼びかけている。
停戦協定を完全履行させ、ガザ復興まで進めなければならない。すべてのパレスチナ人の解放をめざそう。ガザ、西岸地区では軍事占領からの解放を、難民パレスチナ人には帰還の権利を、そしてイスラエルに居住するパレスチナ人に対する人種差別「2級市民」からの解放が必要だ。
ヨルダン川から地中海まで「大イスラエル」化をもくろむネタニヤフを追いつめ、「川から海までパレスチナ解放」を実現しよう。


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