2025年02月07日 1857号
【ノー!ハプサ(NO!合祀)訴訟 最高裁不当判決/国の責任指摘した三浦反対意見/「孫の世代」の新たな訴訟へ】
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1月17日、日本軍人軍属として強制動員され、戦死した韓国人が戦後に靖国神社に遺族に無断で英霊として合祀(ごうし)され、遺族が合祀の取り消しを靖国神社と国に求めていたノー!ハプサ(NO!合祀)第2次訴訟について、最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は、原告の父親らは1959年までに合祀されたとして、被害の発生から20年を過ぎると賠償請求権が消滅するとした民法の「除斥期間」により、賠償を求める権利は提訴時に失われていたとして、訴えを退けた。問答無用の不当判決だ。
「合祀は憲法違反」
しかし、判決書の大半を占める三浦守裁判官の反対意見は、原告の主張を詳細に検討した上で「遺族の主張を前提にすれば、憲法が定める政教分離の規定に反する可能性がある。合祀を望まない韓国人遺族がいることも想定しながら合祀を推進しており、国の責任は極めて重い」と指摘し、「必要な審理が尽くされていない」として、審理を高裁に差し戻すべきだとした。「除斥期間」で上告を退けた多数意見に対しても「被害者にとって著しく酷であり不合理」として、審理が尽くされていないとした。
さらに、三浦裁判官は「本件情報提供行為は、憲法の政教分離規定に違反し、憲法の趣旨に照らし尊重されるべき上告人らの人格的利益が侵害されたものであり、現在も、本件情報提供行為と不可分一体の行為により侵害が継続し損害が生じていると見る余地がある」「被上告人は、国神社における合祀に対する直接的な協力という政教分離制度の中心的な問題において、憲法に違反し、約30年もの長期にわたり、政府の政策として、憲法上保護される人格的利益を有する者に対し、個人の尊厳及び幸福追求に深く関わる犠牲を求める施策を実施してきたということができる」とも指摘。合祀による人格的利益の侵害が現在まで継続しているとの指摘は注目に値する。
2001年に提訴された「在韓軍人軍属裁判」以来、四半世紀に及ぶ「合祀絶止」を求める韓国の元軍人軍属犠牲者遺族の闘いは、ついに、三浦裁判官反対意見を勝ち取った。
次世代が闘いを引き継ぐ
今回の判決に同行した、戦没者の孫にあたる朴善Y(パクソニョプ)さんは「次の世代が法廷闘争を引き継ぐだろうから、さらに強い支持と連帯をお願いしたい」と訴えた。闘いは「孫の世代」による新たな訴訟に引き継がれる。
最高裁では事実審理は行われず、違法性の判断にまでは踏み込んでいない。三浦裁判官の反対意見も「遺族の主張を前提にすれば」と繰り返す。憲法の政教分離規定に違反する国と靖国神社が「不可分一体」で継続的に実行してきた無断合祀の違法性を裁判所に認定させることが重要だ。三浦裁判官の反対意見はその重要な指標を提示した。違法性を認定させ、「除斥期間」を乗り越えて勝訴する可能性は十分あることを三浦反対意見は示してくれた。
見落としてはならないのは、最高裁第二小法廷が靖国神社に対する請求をすべて棄却したことだ。さらに、遺骨返還や謝罪といった請求を「重要でない」と審理の対象から除外し、原告ら遺族の訴えを「相手方国が相手方国神社に情報を提供した行為を理由とする損害賠償」に切り縮めてしまった。また、国と靖国神社が「不可分一体」で合祀を進めたことを指摘しながら、靖国神社の違法行為に触れない点は三浦反対意見の限界である。
未清算の植民地支配
一方、靖国神社は「訴訟は、既に原告方の合祀取消等を求める権利がないことで確定」したとして、遺族との面会さえ拒絶した。朴さんは「私の祖父は『中原憲泰』ではない、朴憲泰(パクホンテ)だ」と創氏名で合祀を続ける国神社に対する怒りをあらわにした。朴さんの祖父はいまだに植民地支配に縛られながら、援護措置からは排除され、同じ人間として扱われていない。
戦後80年の今年、「合祀絶止」は、いまだに清算されていない植民地支配の重要課題だ。
(ノー!ハプサ〈靖国合祀取消訴訟〉・山本直好)

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