2025年02月07日 1857号

【ミリタリー/朝鮮だけでない朝鮮半島非核化へ/軍事圧力と制裁でなくまず軍縮から】

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)金正恩(キムジョンウン)政権による「核強国」路線は、どのような意味でも容認も追認もできない。どれほど「朝鮮の核兵器は防衛目的であり、先制核使用はしない」と主張しようとも、双方(朝鮮VS米韓など)が「やられたらやり返す」「やれるものならやってみろ」といったチキンゲームを繰り返し、「均衡」や「安定」が続く保証などどこにもない。

 対して米国、韓国、日本等が圧倒的な軍事的圧力と経済制裁を振りかざし、朝鮮の「非核化」を威圧的に迫ることで「非核化」がますます遠ざかっている現実も直視しなければならない。

 韓国ハンギョレ新聞・平和研究所の研究者の鄭旭G(チョンウクシク)所長は「北朝鮮が貧しく孤立した核保有国から、貧しさと孤立を脱却する核保有国になりつつある」(『金正恩の「決断」を読み解く』彩流社)と記す。

 これまで、朝鮮の「核カード」は米朝関係の改善や米韓からの援助を引き出すことを主要な狙いとして使われてきた。だが、現在の金正恩政権は米韓との関係を改善しようとする「未練」を捨て、安全保障は核武装で、経済は自力更生と自給自足で、外交は中国とロシア中心でやっていく方針を決定し、実行してきた。

 鄭旭G所長の分析は「北朝鮮は核とミサイルに集中しながらも、在来型の軍事力の比重を減らし、人民の生活と経済発展に政策のエネルギーを投入してきた。最近、いくつかの空軍飛行場を野菜農場に転換し、軍需工場でトラクターを生産して農村現場に供給した」(同)と「軍備の合理化」に一定成功したとする。

 ここから読みとれることの一つは、今や核兵器は大国の独占的兵器でなく貧者の兵器≠ニなったことだ。

 朝鮮の通常戦力(非核戦力)は貧弱な部類に入る。米国の軍事力評価機関であるグローバルファイヤーパワー(GFP2025)によれば、朝鮮の核以外の軍事力は世界34位で、韓国(5位)と日本(8位)と比べても極めて劣勢の位置にある。経済力が乏しく通常戦力を整備する余裕のない朝鮮が、米韓の軍事的脅威に対抗するには核兵器保有がてっとり早い安上がりの策だったということだ。

 追認はしないが、朝鮮は新たな核兵器保有国だ。問題はこの状況をどう打開するかである。韓米同盟は先制攻撃戦略「斬首作戦」「北朝鮮占領」に公然と言及し、軍事演習を繰り返しているが、こうした敵対行動、戦争挑発を直ちにやめさせることがまず必要だ。

 軍事緊張緩和から朝鮮半島の非核地帯化と平和体制構築。道筋は容易ではないが、日米韓軍事一体化と制裁強化でなく、日本から一歩でも軍縮と外交に着手させることが課題である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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