2025年02月07日 1857号
【みるよむ(721)/2025年1月25日配信/イラクのメディアは権力の代弁者】
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現在のイラクでは、SNSも含めあらゆるメディアに対する政府の支配が目立っている。11月、サナテレビはこの問題を報道した。
映像に出てくるイラク教育省の通達は、職員や教育関係者とともに校長のような管理職にも衛星チャンネルへの出演やSNSへの投稿を認めない。野党の政治家は「脅威」とされ、メディアへのアクセスは禁止されているという。
ある弁護士が、メディアで「ISIS(いわゆる「イスラム国」)がイスラム法学の書物に書いている裁定を実行した」と発言した。ISISの抑圧行為にイスラム法学から出ている部分があると批判したものだが、権力はそれが気に食わなかったのだろう。この弁護士は弁護士会の懲戒評議会の審問を受けている。
2019年、政府とメディアのウソを明らかにし国家の財政腐敗を暴露した市民が、公の場から姿を消した。彼は暗殺されたのだ。
一方、メディアに公然と登場する人物らは「憎悪を煽ることを許されている。世論を扇動し、宗派主義を広げることで、支配する政治勢力の利益に貢献するために活動している」とサナテレビは批判する。
サナテレビはさらに、イラクを支配するイスラム政治勢力は民衆が彼らに不満を持っていることを自覚していると指摘する。だからこそ「宗派主義的なレトリック」を使って支配を維持しようとしているのだ。
こうした点は、欧米でも日本でも似ている面がある。SNSなどで支配層に都合の良い情報を拡散し、反対者への憎悪を煽るのは同じではないか。
イラクでは、政府への批判を抑え込むためのメディア支配が進んでいる。サナテレビは、独立メディアとしてこの問題を取り上げ、市民の発言と報道の自由を守ろうと訴えている。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)
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