2025年02月14日 1858号

【経団連 経営労働政策特別委員会報告/労基法解体攻撃と符合/非正規春闘で反撃へ】

 日本の主要大企業を束ねる経団連(日本経済団体連合会)は1月21日、資本側の春闘対策&針を示す「2025年版 経営労働政策特別委員会報告」(以下「報告」)を発表した。

働かせ放題合法化へ

 報告は、冒頭「働き手一人ひとりのエンゲージメント向上を通じた付加価値の増大・最大化と労働生産性の改善・向上を図ることが不可欠」「働き方改革『フェーズU』を追及していくことが極めて重要」とする。

 「エンゲージメント」とは、「従業員が会社に対して愛着や貢献の意志を持っている状態」を意味する。「働き方改革『フェーズU』」は、「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)2021」に示されたもので、(1)テレワークの普及(2)ジョブ型雇用への転換(3)裁量労働制の拡大(4)兼業・副業の普及・促進(5)フリーランス拡大等が掲げられた。

 一言でいえば、低迷する経済を回復させるのはすべて労働者の会社への忠誠と貢献であり、利益を最大化するために、労働時間法制を改悪し、長時間労働・サービス労働の合法化を行おうということだ。

 報告は、「現行の労働基準法が前提とする『労働時間をベースとする処遇』だけでなく『労働時間をベースとしない処遇』との組み合わせが可能な労働時間制度へと見直して、複線化を図っていかなくてはならない」と、働かせ放題に道を開く裁量労働制の拡大を要求する。続けて「裁量労働制の対象業務について、過半数労働組合など企業労使が話し合って決定できる仕組み(デロゲーション)を創設すべき。あわせて、手続きの簡素化のため、労使委員会の決議を企業単位、ブロック単位で可能とすることも不可欠」という。

 これらは、1月8日、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が発表した報告書で、御用学者たちが提唱する労働基準法解体と内容がぴったり符合する。

賃上げ誇示の虚構

 報告は、23年、24年と、「賃金引き上げの力強いモメンタム(勢い)」が出てきたと自賛する。だが、名目賃金は上昇したが、物価上昇の影響で実質賃金は依然として減少傾向にある。

 24年5月のデータでは、名目賃金が前年同月比で1・9%増加したが、実質賃金は1・4%減少。厚労省データによれば、24年11月の実質賃金は前年同月比で0・3%減少し、4か月連続のマイナスとなった。

 経団連と連合が「5%を超える賃上げ」と誇っても、約700万人の労働者に適用されるだけで、雇用者の7割(4千万人超)の中小企業で働く労働者の賃金、雇用者の4割を占める非正規労働者の賃金が上がっていないことが最大の問題だ。

 報告は「大企業と発注企業側における適正な価格転嫁(企業が原材料費や人件費、エネルギー費などのコストの上昇分を販売価格に反映させること)の積極的な推進」を強調するが、これを阻害しているのは、ほかでもない経団連会員企業であるグローバル資本だ。


非正規春闘で賃上げを

 24年3月、公正取引委員会は「独占禁止法上の『優越的地位の濫用(らんよう)』に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果を公開。多くの取引先に対し協議なしに取引価格を据え置きする行為などが確認された事業者名を公開した。ダイハツ工業や京セラ、西濃運輸、三菱ふそうトラック・バスなど大企業10社が挙がっている。

 全体でも、価格転嫁率は50%で、下請企業の労働者の賃金上昇が困難となっている。こうした不法企業や公正取引員会、中小企業庁に対する抗議要請活動も25春闘の重要なテーマだ。

 パートやアルバイトなど非正規雇用の労働者が賃上げを求める「非正規春闘」が始動している。非正規春闘は、パートやアルバイトなど勤務先の異なる非正規雇用で働く人たちが、個人で加入できる労働組合を通して、それぞれの職場に賃上げを求める取り組みだ。東京、大阪をはじめとして非正規春闘実行委員会を発足させ、10%以上の賃上げなどを打ち出した。

 非正規労働者の勇気ある立ち上がりを全力で支援していかなければならない。



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