2025年02月14日 1858号

【トランプのガザ「一掃」提案/破壊し住めなくして追い払う/イスラエルの民族浄化を支援】

 米国のトランプ大統領がパレスチナ自治区ガザの住民を近隣各国に強制移住させたいとの考えを示した。トランプ発言はイスラエルによるガザ侵攻の真の目的を浮き彫りにした。破壊し尽くし、住めなくして、追い払う―。まさに民族浄化というほかない。

事実上の強制移住

 「文字どおり解体現場のよう。ほぼすべてが破壊され、そこで人びとが死んでいる。だから私はアラブ諸国と協力し、人びとが違った環境で、うまくいけば平和に暮らせるような家を、別の場所に建てられればと思っている」

 1月25日、トランプはガザ地区の今後について自身の考えを明らかにした。パレスチナ人はガザ以外の土地に移住させればよい、と言うのである。「(ガザには)おそらく150万人ほどがいる。われわれはそのすべてを一掃する」

 そう語るトランプは、ヨルダンやエジプトにガザの人びとの受け入れを打診したことを明らかにした。ただし両国は断固反対しており、アラブ連盟も「民族浄化にほかならない」とトランプ提案を非難した。

 当事者であるパレスチナ側はもちろん猛反対している。自治政府のアッバス議長は「私たちの民をガザ地区から移住させることを狙ういかなる計画も強く拒否し非難する」と表明。ハマスのナイム政治局員は「たとえそれが復興の名の下で善意に見えたとしても、人びとが受け入れることはない」と話した。

 一方、イスラエルからは歓迎の声が上っている。ガザ停戦に反発し、連立政権を離脱した極右政党「ユダヤの力」のベングビール党首(前国家治安相)は「世界の超大国の大統領がこのアイデアを持ち出すなら、実行する価値がある。今こそ移住を促進せよ!」とXに投稿した。

 宗教シオニスト党を率いるスモトリッチ財務相も声明で「これまで政治家たちはパレスチナ国家を樹立するという非現実的な解決を提案してきたが、流血につながるだけだった」と主張。トランプの「素晴らしいアイデア」に賛同の意を示した(1/27毎日)。

侵攻の真の狙い

 ガザでは約15か月続いたイスラエルの軍事攻撃で4万7千人以上が死亡(犠牲者の7割は女性と子ども)。約200万人いる住民のほとんどが避難を余儀なくされている。国連の推計によると、ガザ全域で建造物の6割が損壊または破壊されており、再建には数十年かかるという。

 ガザへの軍事侵攻を支持し、イスラエルに武器を供給し続けてきた米国の大統領が「もう住めないから移住しろ」と被害者に迫るなんてバカげている。一方、イスラエルの側からみれば、トランプ提案は「我が意を得たり」に違いない。

 イスラエルのネタニヤフ政権はガザ住民を近隣諸国に強制移送するプランを以前から練っていた。諜報省が作成した2023年10月13日付(ガザ侵攻開始から6日後)の内部文書は、軍事行動終了後にガザのパレスチナ人をエジプトのシナイ半島に「移送」する案を推奨していた。

 昨年10月、ベングビール国家治安相はガザへの再入植を呼びかける集会にゲスト参加し、こう述べている。「ガザ人の移出を促進しようではないか。彼らに対して、どこかほかの国に行く機会を与え、土地は我々のものだと伝えることが、最も正しい解決策だ」

 イスラエルの歴史家で、英エクセター大のイラン・パペ教授は「パレスチナにユダヤ人国家を作ろうとする限り、民族浄化は本質的、不可避的に内包されていた」と指摘する。今回のガザ侵攻は「民族浄化の総仕上げ」として実行された。トランプ提案はこのことを雄弁に物語っている。

今こそ国際連帯

 1月30日、イスラエルで国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律が施行された。UNRWAのガザ地区担当広報官は「ガザでは200万人の住民が、食糧支援や一次医療などの面でUNRWAを頼りに命をつないでいる」と語る。イスラエルは命の綱を断ち切ることで住民の「退去」を促そうとしているのだ。

 そして米国では、「反ユダヤ活動」に参加した留学生などを国外退去させることができる新たな大統領令にトランプが署名した。イスラエルが何より嫌がる市民の抗議活動、パレスチナ連帯運動を封じ込めようとしているのである。

 国際的な批判の高まりの中、イスラエルは戦争継続が困難になり停戦を受け入れた。だが、パレスチナ人に対する民族浄化の策動は続いている。今こそイスラエルやその支援者(米国を始めとする各国政府やグローバル企業)を闘いの力で追い詰め、国際法違反の占領政策をやめさせねばならない。   (M)

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