2025年02月14日 1858号

【どくしょ室/イスラエルの自滅 剣によって立つ者、必ず剣によって倒される/宮田律著 光文社新書 940円(税込1034円)/戦争で自壊するイスラエル経済】

 「イスラエルが国際法を順守し、パレスチナ人に平等に平和に生きる権利を認めない限り、イスラエル存続への危機は継続するに違いない」。本書の結論はこれである。「侵略者は必ず敗れる」という近現代史の教訓が示すように、イスラエルも自壊の道を歩んでいるというのだ。

 なぜ、そう言い切れるのか。ガザ戦争の長期化によりイスラエル経済が停滞していることに著者は着目する。2024年2月時点のGDP(国内総生産)は、2023年の第4四半期に比較し19%落ち込んだ。

 イスラエル中央統計局によれば、個人消費は26・3%減少、輸出は18・3%減少し、住宅用建物などの固定資産投資は67・8%減少した。その一方で、主に戦費や企業・家計への補償を目的とした政府支出は88・1%増加した。

 イスラエルは外貨準備高と米国からの軍事支援によって戦費をまかなう腹積もりだったが、戦争の長期化で行き詰ってしまった。2023年10月に始まるガザ侵攻で使った金額は9兆8千億円。国家予算(約22兆7千億円)の4割以上を浪費したのだから、経済が傾くのは当然だろう。

 イスラエル人観光客が海外で拒否されていることも同国の国際的孤立を物語る事例だ。本書は、京都「ホテルマテリアル」の事例を紹介している。支配人だったジェロニモ・ゲレスさんは、イスラエル軍関係者に対し宿泊キャンセルを求めた。同軍によるガザでの戦争犯罪が理由である(本紙1855号参照)。

 永久に戦争を続けられる国家などない。著者が指摘するように「平和こそが経済的にも社会的にも安寧を得る道」なのだ。 (O)
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