2025年02月28日 1860号

【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(15)/NUMO「核ごみ説明会」で見えたこと】

 2024年12月14日、資源エネルギー庁とNUMO(ニューモ 原子力発電環境整備機構)が共催した文献調査報告書説明会(札幌)に参加した。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場候補地選定に向けた文献調査に応募した北海道寿都(すっつ)町・神恵内(かもえない)村で2020年から行われていた文献調査の報告書が11月に公表されたことを受けたものだ。約200人が集まった。

 説明会の運営は極めて非民主的なものだった。「高レベル放射性廃棄物地層処分事業に対する理解醸成の場」と位置付けながら、会場からの挙手による質問も一問一答型の対話もせず、質問票に記載する形で提出された疑問のうち、エネ庁・NUMOが抽出したものに回答するだけ。説明会というより「独演会」であり、抗議の声が上がった。

 私ほか10名が提出した「北海道の核ごみ持ち込み禁止条例をどう認識しているのか。守る気があるのか」という質問に対する回答は「コメントする立場にない」だった。仮にも法治国家≠ニうたうなら、地方自治体が定めた条例であっても「遵守する」と答えるのが筋というものだろう。

 原子力ムラの住人たちはこの間、不都合な法律は公然と無視し、超法規的に振る舞ってきた。司法もそうした法規範破壊に積極的に手を貸してきた。原子力ムラの法規範無視に過去さんざん痛めつけられてきた私が、その回答を「地方自治に対する宣戦布告」と受け止めたことはいうまでもない。

 「核燃料サイクルから撤退した場合に使用済み核燃料がどうなるのか」という会場からの質問に対し「仮に国が核燃料サイクルから撤退することになった場合には、使用済み核燃料は全量が高レベル放射性廃棄物として地層処分の対象になる」とエネ庁・NUMOが揃って明言したことに私は重大な関心を抱いた。国会でも仮定の質問には答えないという姿勢で徹底している官僚として極めて異例といえる。

 青森県六ヶ所村で、当初計画では20世紀のうちに操業開始しているはずだった使用済み核燃料再処理施設は、もう21世紀も4分の1が終わろうとしているのに操業開始できる気配すらない。核燃料サイクルからの撤退に向けた模索が水面下で始まっているのではないか―そう感じた。

 核燃料サイクル撤退に当たって難題≠ヘ、電力会社が使用済み核燃料を負債ではなく資産に計上していることである。再処理後は燃料として再利用する建前になっているのでそうした会計処理を認めているが、「損切り」することになれば経営が傾く電力会社が出かねず、先送りが繰り返されてきた。

 「19兆円の請求書−止まらない核燃料サイクル」と題した資料が経産官僚によって作成されたのは2004年のことだ。それから20年経過し、事態はその「予想通り」、動く気配のない核燃料サイクルにすでに22兆円が投じられた。原発のコスト計算にこの22兆円はもちろん含まれていない。(水樹平和)

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