2025年02月28日 1860号
【読書室/国際法からとらえるパレスチナQ&A イスラエルの犯罪を止めるために/ステファニー・クープ著 岩波ブックレット 630円(税込693円)/諸悪の根源は不法な占領】
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パレスチナ情勢について語ると「難しい」という反応によく出くわす。「宗教絡みの紛争だから日本人には理解できない」という固定観念が根強いのだろう。
本書は「現在パレスチナで起きていることを国際法の観点」でとらえ、さらに「その歴史的・構造的背景を、法を使って読み解いて」いる。問題の背景を正しく理解するための入門書として推薦したい。
さて、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意にもとづく手続きが始まった。情勢が激しく動いている今だから押さえておきたいことを本書の解説から拾い上げてみよう。まずは現在のパレスチナの国際法上の位置づけについて。
1967年の第三次中東戦争以来、ガザそして東エルサレムを含むヨルダン川西岸はイスラエルの占領下に置かれている。国際司法裁判所(ICJ)が昨年7月に出した勧告的意見はこの占領が不法であることを確認している。占領の下で、パレスチナ人の民族自決権が侵害されているのだ。
そして、国際人道法のジュネーブ第四条約は占領地の民間人を強制移送することを禁じている。戦争犯罪であり、人道に対する犯罪、ジェノサイド犯罪に該当しうる。本書の解説は、ガザ北部住民に対するイスラエ軍の退去命令を念頭に書かれたものだが、トランプ米大統領が言い出した「ガザ住民一掃」提案にもあてはまる指摘だ。
ガザの住民の大半は、イスラエルの建国時に故郷を追われた難民とその子孫である。民族浄化の被害者である彼らには国際人権法で帰還の権利が保障されている。周辺のアラブ諸国に強制移住させるなど、法的にあり得ぬ話なのだ。(O) |
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