2025年04月04日 1865号
【新潟・柏崎刈羽原発再稼働ヘ 焦りを深める東京電力/「1秒でも再稼働」の暴挙許すな】
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福島原発事故をめぐる刑事裁判で「身内」の裁判官から旧経営陣「無罪のお墨付き」をもらった東京電力が、柏崎刈羽(かりわ)原発(新潟県)の再稼働に前のめりになっている。だが同時に多くの障害も立ちはだかる。東電の焦りも見えてきた。

準備強行と情報隠し
昨年4月、東京電力は、原子力規制委員会の許可を得たことを理由に、原子炉への核燃料の装填(そうてん)を行なった。再稼働へ向けた最終段階の準備だが、現在まで再稼働に同意した地元自治体はない。明らかに地元自治体も住民も無視する暴挙だ。
だがその矢先、東電を「激震」が襲った。原発への航空機衝突などの重大事態に備えるため、福島原発事故後の新規制基準に基づいて設置が義務づけられた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の設置が間に合わないことを、2月26日、東電みずから公表したのだ。
驚くのは延期後の完成時期だ。7号機はこの3月から2029年8月、6号機は2026年9月から2031年9月。4〜5年もの大幅な延期となる。
規制委は、新規制基準に基づく再稼働の許可から特重施設完成まで5年の猶予期間を設けている。特重施設の工期(52か月程度を想定)を根拠に設定され、期限内に施設を完成できなかった原発は停止させる。
柏崎刈羽原発6、7号機の特重施設工事は実際、どの程度進んでいるのか。そもそも工期が5年のものを5年延期している時点で未着工か、せいぜい着工直後の段階としか考えられない。猶予期間が終わるのは7号機が今年10月で到底間に合わない。6号機も29年9月だ。
今、再稼働してもすぐに再停止が避けられないにもかかわらず、東電が地元同意も得ないまま準備に突き進むのは柏崎刈羽原発の再稼働実績をなんとしても作りたい。そのためなら、稼働期間はたとえ1秒でもいい≠ニ考えているからだ。
福島原発事故の反省もせず、これほど明白な工事の遅れも隠蔽(いんぺい)する東電に、原発を動かす資格はない。
重い15万筆の民意
新潟県では、「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が実施主体となり、県民投票実施を求める条例制定直接請求運動が行われた。昨年末から始まり、一部自治体では今年2月1日まで署名を集め、「決める会」によれば最終的な署名数は15万128筆(うち有効14万3192筆)。新潟県民の12人に1人が署名した計算だ。
県内市町村別に見ると、住民の24%が署名した津南(つなん)町を筆頭に、十日町市の18%が続く。「ここは農業中心の地域。事故が起きればメチャクチャになる」(十日町市・元教員女性)、「農業は引っ越せない。柏崎刈羽で事故があったら終わりだ」(津南町・農業男性)と主要産業である農業への影響を心配する声が多かった。
注目すべきなのは、全住民の14%が署名し、5位となったのが地元・刈羽村である点だ。「ここには福島からの避難者がいて、事故後の状況を聞いている。自民党県議は住民の声をよく聞いてほしい」(地元農家)との訴えを尊重すべきだ。
条例制定し県民投票を
県議会を前に、再稼働の是非をめぐる攻防も激しくなっている。花角(はなずみ)英世新潟県知事との面会などを求める要望書を提出した「決める会」の水内基成さんは「県民投票はこれまで知事が示してきた考えにも沿っているはずなので、賛同してもらいたい」と述べた。
一方「柏崎エネルギーフォーラム」は県民投票を実施せず県議会で再稼働を決めるよう求める要望を提出している。全国団体のエネルギーフォーラムは、原発推進の論陣を張ってきた評論家に賞を授与するなどの「原子力ムラ実働部隊」だ。
「決める会」は、条例案を3月27日、新潟県議会に提出する。審議は4月臨時県議会となる見通しだ。花角知事は過去、再稼働への賛否を明らかにしていない。県民投票を実施して、県民の信を問うべきだ。
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