2025年04月04日 1865号

【大阪・関西万博 始まる前から大失敗/赤字ピンチに無責任な維新/「カジノありき」が招いた大惨事】

 4月13日の開幕まで、あと半月となった大阪・関西万博。地元大阪でもチケットはさっぱり売れず、販売目標に届きそうもない。このままでは運営費を賄えず赤字となり、膨らんだ建設費同様、税金で補填することになる。維新府政・市政がもたらした大惨事だ。

売れないチケット

 万博の入場券が売れていない。日本国際博覧会協会(万博協会)は開幕までに1400万枚の販売を目標としてきたが、3月12日時点で売れたのは目標の6割に満たない821万枚。このうち約700万枚は企業による購入分となっている。個人向け販売がさっぱりということだ。

 万博協会の副会長である関西経済連合会の松本正義会長(住友電工会長)は、目標達成は「実質的に不可能」との見解を示した上で、「経済界の購入がなければ大変なことになっていた」と強調した(3/19)。

 この先、一般向けの販売が上昇する見込みもない。万博自体が不人気だからである。時事通信の3月世論調査(3/7〜3/10実施)で、大阪・関西万博に行きたいと思うかどうかを聞いたところ、「思う」は22%にとどまった。「思わない」は65・3%だった。

 万博の運営費(1160億円)は8割強を入場券収入で賄うことになっている。損益分岐点とされる約1840万枚以上チケットが売れず赤字となれば、穴埋めの税負担を大阪府・市民、さらには国民の全体が強いられるおそれがある。

 悪しき前例がある。東西ドイツ統一10周年を記念して開催されたハノーバー万博だ(2000年)。来場者数が目標の半分にも達せず、連邦政府と地元の州が約1200億円の赤字を税金で穴埋めした。

 その二の舞はほぼ確実なのに、吉村洋文・大阪府知事は「もし赤字になったら、3者(国、経済界、大阪府・市)で協議する。これから開幕に向けて何かすることは考えていない」と言い放った。これが万博の旗振り役を務めてきた人物の言い草か。無責任の極みというほかない。

安全面に疑問

 このほかにも万博には不安要素が山積している。会場の夢洲(大阪湾を埋め立てた人工島)では可燃性のメタンガスが発生している。昨年3月には会場建設現場で爆発事故が起きた。万博協会は「開場中に基準値を超えた場合、速やかにその建物から避難いただき、換気対策を行う」としているが、とても安心・安全とは言い難い。

 最大の目玉とされる木製の大屋根「リング」でも安全面での不安が露呈した。海水による地盤の浸食が早くも起きているのである。建築エコノミストの森山高至さんはこう指摘する。

 「海水で土砂が取られる『洗掘』という現象ではないか。一般的には、盛り土の上をコンクリートで固めるなどして補強をする。なぜ補強していないのか不思議でならない。それでなくとも、万博会場は地盤が弱いことが指摘されており、どんなアクシデントがあるかわからない。夏場に台風が来ればもっと波は高くなる。開幕前からこんなことで、半年間、無事に開催できるのか」

 海外パビリオンの建設遅れも深刻だ。自前で出展する参加国が手掛ける計42棟のうち、外装が完成して万博協会から「完了証明」を受けたのは3月半ばの段階で8棟にすぎなかった。このため建設現場では「24時間フル稼働体制」による過酷労働が続いている。

 労働者の健康と命を削って強行される万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」とは、ブラックジョークにしても笑えない話ではないか。

カジノの隠れ蓑

 万博の経費は膨らみ続けており、会場建設費は当初計画の倍近い2350億円に上振れした。建設費や運営費といった直接の経費だけではない。「会場周辺のインフラ整備」や「会場へのアクセス向上」に計8390億円もかかる。高速道路などを建設する関連インフラ整備費は9・7兆円にものぼる。

 たった半年間のイベントになぜ巨額の公費を投入するのか。日本維新の会が進める夢洲カジノ・IR(統合型リゾート)事業のためである。馬場伸幸前代表はこう語っていた。「(万博事業費は)税金の無駄遣いとは言えない。万博からIRというレールが敷かれていて、うまくいけば大阪・関西経済に大きなインパクトがある。そこには惜しみなくお金を出していく」

 「おまえのカネじゃないぞ」と言いたい。そもそも万博が「経済成長の起爆剤になる」というのは幻想だ。1970年開催の大阪万博は「成功体験」として語られるが、この年以降、関西経済は地盤沈下の一途をたどった。東京五輪もそうだったが、「お祭り頼み」は必ず破たんする。 (M)

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