2025年04月04日 1865号
【読書室/ルポ 軍事優先社会 暮らしの中の「戦争準備」/吉田敏浩著 岩波新書 960円(税込1056円)/地域が戦争の焦点に】
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本書は、加速する日米軍事一体化と「台湾有事」を想定した戦争準備の実態を明らかにし、軍事優先の国策推進が棄民政策≠ナあることを明らかにしている。
岸田内閣(当時)の「安保三文書」改定は敵基地攻撃能力を柱とする。米国から巡航ミサイルトマホークを大量に買い付けると共に、国産の長射程ミサイルを生産し大量保有。南西諸島を中心に配備を進め、そのミサイルを保管する弾薬庫の増設を住民の居住地に隣接する大分、京都祝園(ほうその)など全国の基地で行い、地下化など基地「強靱化」も進行する。基地機能さえ維持できれば、住民は犠牲になってもかまわないとするものだ。
自衛隊と在日米軍の指揮系統が一体化し、「台湾有事」となれば米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれる。繰り返される日米合同演習によって自衛隊の実戦部隊化が進められている。米軍のオスプレイ低空飛行演習は訓練空域を拡大し、自衛隊のオスプレイ配備も佐賀をはじめ住民の反対を無視して強行されている。
歯止めなき大軍拡は財政をさらに悪化させ、しわ寄せは生活保護基準の切り下げなど社会保障の削減=生存権否定に向かう。大軍拡は棄民政策そのものだ。
全国の港湾の軍事利用や自衛隊員募集業務協力など自治体への圧力が強まっている。国の「指示権」を定めた地方自治法改悪は、戦時体制に自治体を組み込むことにつながっているのだ。
著者は、自治体は管理権に基づいて空港・港湾の米軍や自衛隊の軍事利用を拒否できる、戦争の被害者にも加害者にもならないために国に白紙委任状を渡してしまうようなことは決してあってはならない、と訴えている。 (N) |
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