2025年05月02日 1869号
【未来への責任(416)/韓国大統領罷免と強制動員問題】
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4月4日、韓国憲法裁判所は弾劾(だんがい)訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の罷免(ひめん)を決定した。これで韓国の保守政権は朴槿恵(パククネ)、尹錫悦と2代続けて弾劾・罷免されたことになる。
朴の場合は「大統領の地位と権限の濫用(らんよう)」(崔順実〈チェスンシル〉ゲート事件等)が罷免理由であった。尹は「12・3戒厳令宣布、戒厳令第1号の内容、戒厳軍の中央選挙管理委員会侵入」が違憲・違法と断罪され罷免された。いずれも1987年民主化以前の“感覚”で権力を行使、あるいは軍事力をもって権力掌握を図ろうとした末に弾劾されたものだ。
それは次のことを示しているのではないか。韓国の保守勢力はいまだに冷戦体制下の軍事独裁政権時の執権感覚から抜け出せていないが、そのような保守は市民から見放されて行き詰まり、政権担当能力をほとんど失いつつあるということだ。
そして、このような韓国の保守政権をカウンターパートとしてきた自民党政権が1965年以来の対韓政策の見直しを迫られていることを意味する。すなわち、日本政府には植民地支配責任を棚上げし、反共・冷戦、安保と経済を最優先して結んできた日韓関係からの脱却が問われているということである。
日韓関係の転換が予感される中、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動は4月11日、韓国の強制動員訴訟原告の遺族らを招き対被告企業行動、院内集会を実施した。タイトルは「強制動員問題は終わったのか?原告遺族は訴える」。
三菱重工、日本製鉄は遺族らが来日し、面談を求めていることを事前通知していたにもかかわらず門前払い。日本政府・外務省も「日程が調整できない」という理由にもならない理由で断ってきた。両者とも「請求権協定で解決済み」の立場に固執し、植民地支配下で自らがなした強制動員という重大な人権侵害の事実に向き合おうとしない。
しかし、尹政権は終わった。次政権がどんな政権か予断は許さないが、木村幹・神戸大学教授は「新政権になれば、財団の枠組みは維持されないだろう。韓国政府が何とかしてくれるとの期待があってあたかも解決するかのような雰囲気になっていたが基本はそうではない」(4/12東京新聞)と述べている。
日本政府、被告企業は強制動員問題にどう向き合うのか、改めて問われてくることは間違いない。
強制動員問題は、日韓関係をどう転換していくかの試金石である。戦争・植民地支配下で起こした重大な人権侵害に真摯に向きあい、被害者の人権・尊厳の回復を図るのか、それとも1965年体制に固執するのか。前者の道を選択するなら、植民地主義の清算、人権尊重、平和第一の日韓、東アジア地域構築へと連なっていくだろう。後者を選択することは「戦争する国」への道の歯止めをなくすことになる。
強制動員問題解決、そこには私たちの未来もかかっている。
(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜) |
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