2025年05月09日 1870号

【77年続くナクバ(大惨事)を絶つ行動へ/自爆ドローンが避難民一家を標的に/ネタニヤフ政権に協力するな】

 イスラエル軍は日々、パレスチナ人の殺害、建物破壊を繰り返している。ガザ「停戦」を公言した米大統領トランプはネタニヤフ政権支持を鮮明にしている。パレスチナ人の「大惨事=ナクバ」は77年経った今も続いている。ジェノサイドやアパルトヘイトを「正当化」するこの歴史はパレスチナ人だけでなく、全世界にとっての「ナクバ」だ。全力をあげて、犯罪行為をたださなければならない。

殺人能力を実証

 イスラエル軍の攻撃は、彼らが避難先に指定した地域にも及んでいる。避難テントを自爆ドローンの標的にした。4月17日、ガザ最北端の街ベイト・ラヒアで避難家族6人(子ども4人)が寝ていたテントごと吹き飛ばされた。ジャバリア難民キャンプでは一家7人が、19日には南部ハン・ユニスで5人が殺害された。この1週間で30人(子ども14人)が殺されている。

 使われたドローンは、イスラエルの軍需企業エルビット・システムズ社が開発した「スカイストライカー」。低コストで誘導ミサイルのようなピンポイント攻撃が行える≠ェ売り文句だ。標的以外の人物が現れれば、オペレーターは待機モードに戻す命令ができる≠ニし「巻き添え被害の最小化」もセールスポイントに挙げている。

 言われる通りなら、イスラエル軍は子どもを含む一家を狙い定めて吹き飛ばしたことになる。一家全滅を目の当たりにした親類は「子どもたちは何の罪を犯したのか。これは民族浄化の戦争なのだ」と怒りを抑えきれない(4/25DropSiteNews)。

 このエルビット社製自爆ドローンの導入を検討しているのが自衛隊だ。防衛省は、輸入代理店日本エヤークラフトサプライと実証試験などの契約をしている。それに応じるかのようにイスラエル軍はガザでの実戦映像を公開しているのだ。

「すべて同じ立場」

 人質解放と停戦交渉はどうなっているのか。イスラエルの段階的解放・6週間停戦案に対しハマスは全員解放・恒久停戦案を示しているが、双方とも相手の提案を拒否。カタール、エジプトの仲介国からは、全員解放・5〜7年間の停戦、イスラエル軍完全撤退案が出されているが、進展はない。

 問題なのは、これまで仲介者を演じていた米国が明らかにイスラエルの肩を持ち出したことだ。トランプはネタニヤフとの電話会談(4/22)で「すべてのイシュー(課題)で同じ立場にある」と伝えている。

 トランプの親イスラエル姿勢は米国内でのパレスチナ連帯の動きへの弾圧強化となって現れている。

 トランプ政権は「反ユダヤ主義が野放しにされる状態を終わらせる」と大学にパレスチナに連帯する学生の処分などを強要してきた。コロンビア大学など圧力に屈した大学は多い。従わなかったハーバード大学には23億ドル(約3300億円)の補助金凍結を通告。訴訟を起こした大学に追加制裁を公言している。

 トランプは、自らの支持層の反エリート意識も利用しながら、イスラエルが重ねる犯罪行為への抗議を封じ込めようというのである。

停戦支持69%

 だが戦争継続を意図するネタニヤフ政権を批判する声は、イスラエル国内でも高まっている。ネタニヤフが1月からの停戦を潰した3月に行われた世論調査では恒久停戦支持が69%となった。不支持は21%。「ハマス殲滅(せんめつ)」方針は支持されていないのだ。

 政府への抗議行動参加者は「人質を取り戻す唯一の方法は戦争を終わらせることだ」「ネタニヤフ首相らは政治的生き残りのために戦争を終わらせたくないのだ」と語っている。過去3回、予備役としてガザ、レバノンの作戦に加わった若者は「これは自国を守るための戦争ではない。招集に応じたのは間違いだった」と次回の招集には応じないと決めた(4/12NHK)。

 実際、軍関係者からの批判の声は拡がっている。空軍の予備役兵約千人が「戦争反対」の書簡を公表。これに賛同する退役軍人や対外諜報機関モサドの元要員、元外交官、科学者など1万人以上の署名が集まった。

 ネタニヤフ政権は軍や諜報機関からもノーを突き付けられているのだ。

 一方、ガザでもイスラエルに攻撃の口実を与えるハマスの武装闘争に対する抗議行動が起きた(3/25)。パレスチナで非武装で闘うPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)は「イスラエルの大量虐殺を止め、ハマス支配を終わらせようとテントや瓦礫の中から怒りの洪水≠ェ起こった」と表明。

 停戦を妨害する者に対する怒りはパレスチナでもイスラエルでも高まっている。

全世界で行動を

 5月15日はナクバの日。77年前のこの日を前後して、武装したシオニストがパレスチナ人の街や村を襲い、虐殺、強制追放により「イスラエル建国」を強行した日だ。約400の街や村が破壊され、ユダヤ人移民が住み着いた。パレスチナ人は自宅の扉の鍵を手に、再び戻る日を信じて難民となった。

 パレスチナの解放は、自らの土地、家に帰還する権利の補償を抜きには語れない。ガザ、ヨルダン川西岸の軍事占領からの解放、イスラエルでの差別的2級市民からの解放とともに実現しなければならない77年来の課題だ。

 世界各地で、この日に合わせパレスチナ連帯行動が取り組まれる。英国では、ストップ戦争連合などが5月15日を職場行動の日とし、17日にロンドンなどで大規模な集会を開く。米国では女性平和団体コードピンクが、ナクバの日まで30日間、毎日何らかの行動を起こそうと呼びかけている。

 日本でもZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は14日にイスラエル協力企業に対する要請行動に取り組む。15日には東京をはじめ各地で連帯行動が取り組まれる。

 国家テロリストとその支持者を孤立化させる非暴力の闘いが問われている。





 
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS