2025年05月09日 1870号

【OPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)/フジテレビ 中居氏性暴力事件は終わっていない/許せない! 性犯罪】

 2023年6月、当時フジテレビのアナウンサーであったAさんが、タレントの中居正広氏による性暴力を受けた。以前からAさんは中居氏の出演番組に出ていたことがあり、飲み会に同席。この日は、中居氏と二人だけで食事をしようと誘われた。Aさんは、性暴力による深刻なダメージでPTSD(心的外傷後ストレス障害)となり、長期の入院、フジテレビからの退職を余儀なくされた。

 第三者委員会が今年3月、詳細にわたる報告書を提出。委員会は、この事件を「業務上の延長上で発生した事件」と判断した。Aさんは中居氏に誘われた時、「芸能界の大御所から言われたら行かざるを得ない。ここで断ったら仕事に影響が出るのではないか」と思ったと語っている。「中居氏とAさんの間には、圧倒的な権力格差があり」中居氏の行為は、「重大な人権侵害」と報告書は認めた。

 事件後の会社の対応はどうだったのか。会社側の受け止めは「プライベートな男女間のトラブル」という認識であり、「社長らの性暴力に対する無理解と人権意識の低さ」があった。しかも「外部に漏れたらまずい」と一部の人間だけで処理しようとし、中居氏からの事実確認もしていない。中居本人は、Aさんに対する謝罪も一切なく「見舞い金」を渡して終わりにしようとした。事件後も引き続き番組に出演し続け、Aさんの退職で、会社も中居氏も「ひと段落」とした。

 フジテレビに対する批判と不信が広まり、広告を取りやめる企業が続出する中で、会長、社長が引責辞任、中居氏は芸能活動引退になったが、それで事件を終わらせてはならない。

 「元の自分には戻れない」と語るAさんは、真の意味での救済はされていない。少なくとも、中居氏本人の公式の謝罪と、法的責任も含めた責任追及が必要だ。また、委員会調査では「社内においてハラスメントがまん延していた状態」「企業風土として男性優位構造が強化される土壌」があり「被害者が声を上げることが困難になっている状況が存在する」と企業組織そのもの問題が指摘された。会社としての補償とともに、組織全体についてジェンダー平等の視点からの根本的な改革が問われている。

メディアと社会全体の問題

 Aさんは「このようなことがメディア・エンターテインメント業界だけでなく、社会全体から無くなることを心から望みます」と述べる。フジテレビに限らずメディアに共通する問題であり、さらに日本社会全体に根深くはびこる差別とハラスメントが背景にある。

 事件を手がかりに、こうしたハラスメントをなくさなければならない。ハラスメントへの刑事罰、民事救済の規定を持つハラスメント禁止法、ジェンダーに基づく差別を禁止する包括的な差別禁止法の制定が緊急に求められている。

(OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉代表・山本よし子)
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