2025年05月16日 1871号

【消費税は廃止(上)/不公正不公平な欠陥税/大企業課税強化で廃止は可能だ】

 物価高対策としての消費税減税が参院選政策として各党から出ている。これまで反対してきた勢力まで方針転換を迫られ、消費税減税の可能性が高まってきた。

 各世論調査で見ると、消費税減税賛成が60%前後となっており、年代別では若年層の賛成が高い。物価高騰に苦しむ人びとの切実な思いが反映されている。

 これに対し、「消費税は社会保障のための安定的な税」「代わりの財源はどうするのか」など、メディアをはじめ消費税減税の実現を阻もうとする「反論」も強まっている。今改めて消費税そのものの問題点と廃止への財源はあることを焦点にしなければならない。

消費への税自体が問題

 消費税は、無差別課税であり、公正公平な税ではなく欠陥税である。年齢や境遇に関係なくすべての人を対象に各人の負担能力が配慮されない。生きるための消費に税を課すること自体が問題なのだ。

 税には公正で公平な仕組みが不可欠だ。支払い能力に応じて納税する応能原則≠ェ貫かれなければならない。ところが、消費税は一律に課税されるため、相対的に収入の多くを消費に回さざるをえない低所得者に負担度がより強まる。

 つまり、消費税には逆進性がつきまとうのだ。食料品への軽減税率が導入されても逆進性は解消されない。いわば、消費することを罰する性格があり、消費税そのものの是非を問うべきだ。

 消費税にはさらに数々の問題点がある。

 「受けとった消費税を納めないのはおかしい」との批判があるが、消費税は預り金ではない。「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」(東京地裁判決、1990年)のだ。赤字の事業者にも課税されるため、滞納を多く生み出す税(全滞納の約60%)となっている事実が見過ごされている。

 次に、消費税はリストラ推進の道具になっていることだ。企業が人件費として消費税対象となる正規雇用を減らし、外注化などで派遣労働者や請負会社に置き換えれば消費税負担が少なくなるからだ。

 また、還付金が消費税収の約35%も占め税制の歪みを生じさせている。トヨタなど輸出大企業上位20社への還付金は2兆1800億円(2023年度、湖東京至・元静岡大学教授の試算)に達しており、実質的な輸出補助金となっている。

 消費税増税と併行して行われてきたのが法人税減税である。消費増税分は法人減税分の穴埋めにされてきた。この関係を否定するために「消費税は社会保障の財源」と強調される。だが、消費税は目的税ではないので、そのまま社会保障に使われるわけではない。法人税減税の財源になっているのが実態なのだ。

 本来直ちに実行すべき消費税廃止に対し、常に「代替財源」が持ち出される。




軍事費削減と法人税で

 まず、米軍再編など関連経費を含めると9兆円を超える軍事費や無駄な公共事業費の削減を前提にすべきだ。もちろん、これらだけで消費税廃止分(23・8兆円、2024年度予算国税分)にはならない。

 国債に財源を求める案があるが、これ以上の国債依存は、財政の不均衡を一層深刻化させ、インフレや将来世代の負担増、社会保障削減攻撃につながる。

 一方、現行では比例課税となっている法人税を累進課税にすると、どうなるか。不公平な税制をただす会・菅隆徳共同代表は、5段階の累進税率導入で「法人税収は10兆4676億円(2016年)ですが、29兆1837億円と19兆円増えます」と試算を紹介している(表1)。19兆円あれば、消費税を5%にすることによる税収減15兆円を十分まかなえる。同会の直近の試算では、大企業や富裕層への応能負担を徹底させ、不公平税制の是正で58兆1497億円が生み出せる(表2)。

 他にも、富裕層に有利な金融所得課税の強化などいくつかの案が出ており、それらも加味すれば消費税は廃止できるのである。

       《つづく》
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