2025年05月16日 1871号
【北海道電力泊原発 不備だらけでも「合格」の規制委糾弾 科学無視の再稼働は許されない】
|
原子力規制委員会は4月30日、北海道電力泊原発が審査基準に「適合」しているとする「審査書」案を了承した。だが、泊原発では、防潮堤問題をはじめ再稼働への前提すら何も整っていない。不備だらけの状態で合格を認めた規制委を許してはならない。
規制委は、泊原発敷地内を通るF―1断層が活断層であることを2018年にいったん認め、北電に合否の基準となる12万年前より最近に活動実績がないことを証明するデータの提出を求めていた。ところが、2020年にあっさり姿勢を転換し、最近は合格に前のめりになっていた。
泊原発再稼働に反対する小野有五・北海道大学名誉教授(地質学)らがつくる「行動する市民科学者の会」は、2・3号機直下にも活断層が走っているとして、北電に調査を、規制委には審査を要求していたが、両者がこれらを無視したことも科学的姿勢ではない。
規制委は、核燃料を運び込む大型船舶が防潮堤に衝突した場合、防潮堤がその機能を果たせなくなるとして、北電に対し原発敷地内の港の使用を禁止した。その後、北電が泊村に核燃料運搬用道路を建設する計画を出すと、一転して「核燃料運搬道路が原発の敷地外」であることを理由に規制委の管轄ではないとして強引に合格させた。例えは悪いが「落第寸前の学生を無理やり合格させるため、苦手な問題をすべて外し、得意な問題だけを集めて問題用紙を作る」に等しく、これでは審査の名に値しない。
そもそも泊原発では、2022年5月、札幌地裁が「防潮堤が完成していない」ことを理由に運転差し止めを認めており、現在も札幌高裁で裁判が続いている。その防潮堤が完成しておらず、津波に対して無防備のままの原発に合格を出すのはあまりに非常識だ。原発敷地内へ核燃料を搬入する経路も決まっていない以上、北電が目指す2027年再稼働はまったく見通せない。
パブコメに意見集中を
5月5日、札幌市内で開催された「泊原発を再稼働させるな! 核ごみを北海道に持ち込ませるな! 北海道大行進」には200人が参加。スピーチに立った小野名誉教授は「事実上の不合格だ」として合格ありきの杜撰(ずさん)な審査をした規制委を批判。参加者は、五月晴れの青空の下、元気にデモ行進した。
この審査書案に対するパブリック・コメントが5月31日まで行われている(「原子力規制委 泊原発 パブリック・コメント」で検索)。審査見直し、廃炉を求める市民の意見を集中しよう。
 |
|