2025年05月16日 1871号
【読書室/軍拡国家/望月衣塑子著 角川新書 900円(税込990円)/武器輸出解禁から全土要塞化へ】
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著者は2014年に安倍政権のもとで解禁された武器輸出をテーマに『武器輸出と日本企業』を2016年に出版している。この武器輸出解禁から10年。殺傷兵器の輸出も可能となり、軍事費は激増した。本書は、こうした急速な軍拡国家への動きについて取材をもとにまとめたものだ。
安倍政権が定めた「防衛装備移転三原則」では「殺傷能力」のある武器は輸出できないとされていた。しかし、岸田内閣は、米国からのライセンス生産であるパトリオットミサイルの米国への輸出(実質的にはウクライナへのミサイル供与)や、英・伊と共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出を可能とする閣議決定を行った。安倍内閣以来、国会審議を経ずになし崩し的に武器輸出を拡大し、ついに殺傷能力を持つ兵器輸出へと踏み出したのである。
岸田政権は2022年12月、「安保三文書」改定で「敵基地攻撃能力」保有を認め、5年間で43兆円の大軍拡方針を決定した。
決定につながる政府有識者会議で、日経新聞幹部は防衛産業成長推進を提唱し、読売新聞グループ社長や朝日新聞の元主筆も軍拡を当然と発言。新聞をはじめメディアはそうした流れを後押ししてきた。戦争に加担した戦前のメディアの教訓を忘れてはいけない。
著者は2023年1月、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」を女性ジャーナリストや学者らと立ち上げる。安保三文書の改定がきっかけだ。東京新聞記者として官房長官会見などで鋭い質問で追及してきた著者。今はデスクだが、記事を書くだけでなく、小さくとも声をあげ続けていくことが大切だ、と改めて感じていると言う。(N) |
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