2025年05月30日 1872号
【あらゆる問題はつながっている/コロナ被害者・労働者から見る「憲法」のいま/新型コロナ被害者の会・首都圏なかまユニオン神奈川支部 岩本悠佑】
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コロナ問題、労働問題、野党共闘、憲法問題―一見すれば全く違うものに見えますが、コロナ禍や労働のあり方を見れば問題の本質や課題、当事者の実態や状況は似たようなものに見え、あらゆる問題・課題とつながっています。
終わっていないコロナ問題
まずコロナ問題です。コロナ禍において多くの労働者の収入が減り、職や住まいまで失った労働者がいました。医療逼迫や自治体行政の連携・体制不足で医療に辿(たど)り着けなかった感染症被害者もいます。ところが政府は、自己責任や努力義務を煽(あお)り、オリンピックやGo Toキャンペーンに税金を垂れ流していました。そして医療など行政のあらゆる所で欠陥・課題が出て、政府の対応に批判的な声が市民や当事者から上がりました。
しかし、コロナが5類に移行してから世間はどうでしょうか。コロナはなかったような風潮にされ、コロナ被害は軽視されています。コロナ感染やワクチンの後遺症が残ってしまった当事者は置き去りにされ、後遺症と孤立に苦しみ、さらに反ワクチンや反コロナの過激な界隈からは中傷・差別・分断され、心身共に傷つけられた当事者、泣き寝入りする当事者、過激界隈に利用される当事者など、被害当事者が差別・偏見をはじめ二重三重の被害に遭っています。一人暮らしの後遺症当事者は医療まで辿り着くのに今でも苦労したり、コロナ前の日常に戻りたいと訴えたり、「後遺症に周囲の理解・配慮がされない」「障害者手帳を申請しても却下された」といった実態もあります。
今年の憲法集会でも署名を呼びかけましたが、署名を躊躇(ためら)ったり拒否したりと反応が悪く、忘れ去られたように感じました。でも、コロナ問題は終わっていません。国内でははしかや百日咳、世界でも別の感染症の発生や死亡が問題になっています。
苦しみ闘う労働者たち
次に労働問題です。コロナ禍の問題に加え、スキマバイトなど「自由で多様な働き方」と多様性が強調され、賃上げや初任給アップで待遇改善と誇らしく報道されています。しかし、製造や土建などものづくりを支える下請けの中小零細企業はどうでしょうか。高騰する材料費、固定支出(家賃や光熱費)に加えて人件費を上げれば財政が逼迫し、賃上げをしたくてもできない。大手メーカーの圧力や上下関係で不当減額され、追い打ちをかけられる。派遣業界は会社倒産が増え、給与未払いのまま雲隠れなど、最後まで労働者をそっちのけにして自己利益と保身に走る始末です。
フリーランスや業務委託についても、新法が成立したものの最賃法は適用されず、請負元が賃金未払いで逃亡したため日常を狂わされ、心身共に苦しみながらも闘っている労働者がいます。コロナ後遺症同様、精神障害やハラスメントへの周囲の無理解・無配慮で肩身の狭い思いをし、ストレスが増える当事者もいます。就労継続支援事業所で働く労働者に最賃法が適用されず、出来高制を導入している所では工賃をもらっても通所で赤字になり、生活が逼迫しています。昨年9月に偽装閉鎖で事業形態を変えられ、工賃を減らされた例もあります。住宅をめぐっては、住居がなければ職を得ることができず、職がなければ住居を得られない。社宅や社員寮があったところで倒産解雇になればその基盤すら失われる。そして家賃が値上がりし、生活保護(住宅扶助)の家賃補助も困難に近づいています。
当事者が訴え憲法活かす
以上から考えられるのは、いくら法を改正しても市民や労働者、被害当事者の実態を無視しているようではイタチごっこに過ぎず、憲法を変えたところで解決などできません。私たち被害者団体や労働組合に必要なのは、憲法を活かし、当事者の実態と要望を世間に訴えて彼らの受け皿となり、それを市民や憲法と暮らしを守る野党につなげて市民と野党の共闘をリードすること。これこそ今私たち被害者団体や労働組合、野党共闘がやるべき課題と活かすべき権利です。
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