2025年06月06日 1873号

【OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉/選択的夫婦別姓は人権問題/今国会で実現させよう】

 通常国会の大きな争点の一つが選択的夫婦別姓である。野党が公約で掲げていた「選択的夫婦別姓」を実現する動きが活発になってきた。現在夫婦同姓を強制している日本は、世界から立ち遅れている。フランスや中国、韓国などでは原則別姓。ドイツ、スウェーデン、アメリカ、イギリスが選択的夫婦別姓だ。夫婦同姓を法律で義務付けているのは日本だけなのである。

 日本では結婚後に改姓するのは約9割が女性であり、改姓したことで仕事への影響、様々な手続きの煩雑さ、「アイデンティティの喪失」などで、姓を変えたくないと思う人は多い。これは、女性の人権の問題である。

 これまでなかなか動かなかった政府への国際的な働きかけも強まっている。国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)はすでに4回も、日本が夫婦同姓を義務付けていることは「差別的な規定」であり、女性が結婚後も自分の姓を維持できるよう民法改正を勧告している。特に2024年の勧告は、フォローアップ項目になっており、2年以内に進捗状況を報告しなければならない。国際的にみても、選択的夫婦別姓は、先送りできない緊急の課題だ。

 今国会では、立憲民主党が選択的夫婦別姓の民法改正案を衆議院に提出している。ただし野党の中でも法案を一本化できていない。自民党内には強硬な反対派がおり、石破茂首相も「消極的」で6月22日閉会を前に成立が危ぶまれている。

 反対派は、旧姓使用を通称として使うことを拡大すればいい、子どもと親の姓が違うのは問題だ、と「理由」をあげる。

 自民党の高市早苗議員は「パスポートや免許証など旧姓の通称使用を進めてきた」というが、現実に金融機関の口座開設や不動産の売買契約などの民間取引では限界がある。しかも、改姓した人(ほとんどが女性)だけが不便を感じるのは不合理だ。また、子どもと親の姓が違うことで「家族の一体感がなくなることを危惧」と言う議員も多いが、いまだに家父長制にもとづく「家族制度」にとらわれている。

 選択的夫婦別姓は人権問題である。「個人の尊重と両性の本質的平等の観点から、同姓を希望する者、別姓を希望する者それぞれに対し、選択の自由を認めるものである」「国は、選択的夫婦別姓制度導入の 問題が、氏の変更を強制されない自由をすべての個人が享有すべきであるという人権の問題にほかならないことを真摯に受け止め、民法750条による人権侵害の現状を速やかに是正すべきである」(2021年、日弁連意見書) 。これが当然であり、世論を広げ今国会での成立を実現しよう。

(OPEN代表・山本よし子)

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