2025年06月06日 1873号
【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える/原発運転差止訴訟で棄却判決続く ここにも6・17最高裁判決の影響が】
|
原発の運転差止訴訟で住民請求を棄却する判決が続いている。2025年に入っただけでも、2月21日に川内原発1〜2号機運転差止訴訟(鹿児島地裁)、3月5日に伊方原発3号機運転差止訴訟(広島地裁)、3月14日に老朽原発(高浜原発1〜2号機、美浜3号機)運転延長認可取り消し訴訟(名古屋地裁)、3月18日に伊方3号機運転差止訴訟(松山地裁)という具合だ。
一連の判決は、まず原子力規制委員会による審査や判断に「不合理な点は認められない」とし、新規制基準に合格した場合は「社会的に許容される程度の安全性が確保されていると推認できる」とする。それは「運転期間は原則40年」を超えて例外的に20年延長が認められた老朽原発でも変わらない。名古屋地裁判決は「具体的な審査基準は外部の専門家を含め妥当性が確認されていて、原子力規制委員会の審査や判断にも不合理な点は認められない」として、住民側の懸念や疑問をばっさり切り捨てた。
また川内原発と伊方原発では基準地震動の過小評価(耐震性)や火山の破局的噴火などが争点となったが、「原告らの生命、身体などを侵害する具体的危険が生じているとは言えない」(広島地裁、松山地裁)、「火山噴火や地震によって事故が起きる具体的な危険性があるとは認められない」(鹿児島地裁)とした。
広島地裁判決に至っては、「安全性が確保できていないと主張するなら、具体的な危険の存在について原告が主張すべきである」と明記している。これは、原発に関する訴訟については行政庁の判断に不合理な点がないことを行政庁が相当の根拠、資料に基づき立証する必要があり、立証を尽くさない場合は、その判断に不合理な点があると推認されるとした1992年の伊方原発最高裁判決を根拠なくひっくり返すものだ。
さらに実効性が争われた避難計画については、「具体的な危険性の発生を前提とする避難計画の合理性の有無について検討するまでもない」などとして、検討すらしなかった。こうした直近の判決と、「避難計画やそれを実行する体制が整えられているというにはほど遠い状態で、防災体制は極めて不十分」として原電に運転差し止めを命じた水戸地裁判決(2021年3月)を比べると違いは明らかだ。
原発賠償請求4訴訟に関する「国に責任なし」の最高裁判決(2022年6月17日)を境に「原発最大限活用」政策が公然化し、原発関連訴訟では原告敗訴の判決が続いている。樋口英明・元判事は「6・17最高裁判決が今後も維持されることになれば、それは原発運転差止訴訟にとっても大きな障害となる」と語っている。6・17判決を正す(新たな正しい判決をかちとる)ことを目標に昨年から始まり、今年は6月16日に予定されている最高裁包囲行動(ヒューマンチェーン)を昨年以上の規模で成功させ、司法の現状への怒りを示したいものだ。 (U)
(クリックで拡大) |
|