2025年06月20日 1875号
【韓国大統領選/軍事クーデター阻んだ市民の勝利/「光の革命」の要求実現へ】
|
韓国大統領選挙が6月3日実施され、野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)が大統領に就いた。日本では「反日」か「親日」か、と敵・味方の論評に終始しているが、軍事クーデターを防いだ韓国市民の選択の結果であることを忘れてはならない。新大統領は厳寒の道路に座り込んだ何百万の市民が求める社会大変革を実現する責任を背負っている。
内乱に審判
「非常戒厳」を宣布した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(当時)が弾劾、罷免されたのにともない実施された大統領選(有権者約4400万人)。立候補者は7人。事実上、尹の弾劾に反対した少数与党「国民の力」金文洙(キムムンス)候補か尹を批判し「内乱審判」を前面に出した最大野党「共に民主党」李在明(イジェミョン)候補かの選択だった。結果は、49・42%の票を得た李在明が、金候補に8・27ポイントの差をつけ勝利した。
昨年12月、軍隊が国会を包囲した時、韓国市民は軍による議場制圧を阻止し、「戒厳解除」の議決を支えた。ペンライトを手に厳冬の広場に座り込んだ市民がつかんだ勝利だった。ハンギョレ新聞は社説で「国民が内乱の審判と民主主義の回復の熱望を李大統領に全面的に与えた結果だ」と書いた(6/4)。
投票率は79・4%。1997年、金大中(キムテジュン)が大統領に当選した時(80・7%)に次ぐ高さだった。今回、最も高い地域は光州市83・9%。得票率は84・77%に達した。80年、民主化を求める市民が戒厳令下で軍隊により殺害・弾圧された光州事件の悲惨な経験が多くの市民を国会前へと動かした。それを象徴する数字だ。
ソウルでは、前回の大統領選(22年)で李候補が尹候補に負けているが、今回5ポイント以上の差をつけ勝利した。投票率は80・1%と平均を上回った。

新たな国づくり
だが、「李在明の圧勝」とはなっていない。元「国民の力」代表だった保守系野党「改革新党」李俊錫(イジュンソク)は8・34%の票を得た。保守二人の票を合わせれば49・49%、わずかだが李在明の票を上回る。
逆に民主勢力も李在明で一本化したわけではなかった。尹の弾劾を求めた市民団体や労働組合、政党により結成された「社会大転換連帯会議」は、「民主労働党」権英国(クォンヨングク)候補を推した。得票率は0・98%、34万票余にとどまったが、保守か民主かと票を分ければ、民主勢力が30万票上回ったことになる。
国内世論は2分されている。李大統領は「偉大な『光の革命』は内乱終息にとどまらず、輝く新たな国にするよう命じている」と国会で演説(6/4)。国会前に集まった市民には「統合と回復」を誓った。確実に実行されるべきだ。
だが、掲げた「10大公約」の第1は「世界をリードする経済強国」。新自由主義政策の推進だ。権候補が第1に掲げた「(富裕層への)増税による不平等解消」とは大きく異なる。
見過ごせないのは、軍需産業を韓国を代表する産業に育成するとしていることだ。ウクライナ戦争で欧州への輸出を拡大している軍需産業をさらに後押しする投資や税優遇策を掲げている。
「光の革命」が命じた「新たな国」の実現こそ求められている。社会大転換連帯会議は「私たちの挑戦はいま始まりだ」と声明を発している。
東アジアの平和へ
東アジアの平和にとって尹外交は最悪だった。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を挑発、日米との軍事協力を緊密化し軍事緊張を高めた。
李大統領は外交政策を大きく転換させる必要がある。公約には「持続可能な朝鮮半島の平和を実現」とある。だが、その一方で、「堅固な韓米同盟に基づく抑止力確保」を掲げ、「韓国型弾道ミサイル性能の高度化」をめざすなど軍事路線は放棄しない。
日米両政府はインド太平洋諸国を対中軍事包囲に引き入れようとしている。李政権が公約通り「南北関係の復元及び和解・協力への転換推進」を行うなら、軍事緊張を高める日米の構想に大きな打撃を与えることができる。「朝鮮半島の平和プロセス再開」(権英国候補公約)を韓国市民と連帯し、実現しなければならない。東アジアから平和の波をつくりだそう。
 |
|