2025年06月20日 1875号

【ミリタリー/今 ドイツがイスラエルを批判/世界が問われる植民地主義】

 「地獄を見せてやる!」との言葉通り、国際人道法を侵害し、戦争犯罪の限りをつくすイスラエルのガザ住民絶滅作戦。イスラエル政府は「テロとの戦争」を大義名分とするが、その名分でこの残虐行為を正当化しているのは、もはやネタニヤフ政権とイスラエル極右勢力だけである。

 これまで、国際司法裁判所や国連をはじめいわゆる国際社会≠フ多くがネタニヤフ政権の反人道行為を批判する中、頑なにイスラエル(ネタニヤフ政権)支持に固執してきたドイツがついにイスラエルの軍事行動容認をやめ、批判する発言を行った。

 ドイツのメルツ首相は5月26日、ガザ攻撃を激化させるイスラエルに対して、「もはや目的が理解できない」「テロとの戦いとしてはもはや正当化できない」「国際人道法が侵害されているのであれば、発言しなくてはいけない」と語った。

 一貫してイスラエルの言う「テロとの戦い」を容認してきた西欧各国が、イスラエルとの自由貿易協定交渉(FTA)を即時中断することを発表する(5/20イギリス)など、次々とイスラエル批判に転じる中での態度変更である。

 ドイツを含め西欧の列強が、なぜ暴虐の極致に至る今日までこの「テロとの戦い」を容認、支持し続けてきたのか。ドイツの場合、ナチス政権時代のユダヤ人大虐殺(ホロコースト)への反省≠ゥら、イスラエル支持を貫き、イスラエル批判には他国よりも慎重であるべきだとの「国是」があるからとの「説明」がよく聞かれる。では、イスラエルの「テロとの戦争」は度を超えたこと(「やり過ぎ」)だけが問題なのか。

対テロ戦争≠アそテロ

 前回の本コラムで、そもそも空爆は植民地宗主国による植民地住民の抵抗、戦意をくじくためのテロ行為として歴史上多用されてきた、現在のイスラエルのガザ空爆は植民地主義によるテロそのものだ、と訴えた。

 「テロとの戦争」を大義名分に好き放題にテロを行う。植民地支配と占領に抗議する植民地民衆に対するテロ攻撃。これが「テロとの戦争」の真の姿である。

 ドイツは、ナチスが犯した大量虐殺等の戦争犯罪だけでなく、自国が歴史上行った植民地支配に向き合い、その清算に努力してきたといえるのだろうか。欧米の列強もみな同じである。日本も、軍国主義の反省≠ヘあっても、植民地主義の清算に真摯に向き合うことを避けてきた。このことが、米国を筆頭とする「テロとの戦争」=民衆へのテロを容認する真の原因である。

 まず、イスラエルによる大量虐殺を止める。そして、パレスチナ解放へと向かうとき、植民地支配廃絶という今日的課題に踏み出すことが世界に求められている。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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