2025年06月27日 1876号

【マイナ保険証一本化とめるチャンス/資格確認書の一律発行を/自治体交渉・請願・質問で迫ろう】

 政府は、健康保険証(保険証)を、マイナンバーカードに保険証機能を持たせたマイナ保険証に一本化するため、昨年12月に現行保険証の新規発行停止を強行した。これに伴い、マイナ保険証を持たない人等に、保険証期限切れ後は保険証と同等の機能を持つ「資格確認書」が発行されることになった。

 7月末、多くの自治体で国民健康保険証の有効期限切れを迎える。今、マイナカードの保有率は78・6%に達しそのうちマイナ保険証登録は約86%にのぼるが、マイナ保険証の利用率は4月末で28・65%と低迷したままだ(図)。4人に3人は現行保険証か資格確認書を使っている。利用されないのは、資格情報が正しく表示されないことへの不信、個人情報の漏洩(ろうえい)の恐れ、マイナンバーカードを持ち歩く不安などが原因だ。



 全国保険医団体連合会の「2024年12月2日以降のマイナ保険証実態調査結果」によれば、回答した医療機関の9割近くが何らかのトラブルに見舞われており、現在でも解決していない。その際、従来の保険証で資格確認しているとの回答が78・0%(5784医療機関)と圧倒的で、「無保険扱いで10割負担」となった場合も12・3%(911医療機関)にのぼる。このまま現行保険証が有効期限切れを迎えれば、現場はさらに混乱し、「10割負担」が増加することは確実だ。

世田谷区など一律発行

 その状況の中、東京都世田谷区と渋谷区が国民健康保険証の資格確認書の一律発行を決めた。保坂展人世田谷区長は「保険に入っているのに、保険診療を受けられないケースは避けなくてはならない」と言う。保険診療を守り市民を守るための保険者たる自治体の当然の決断であり、英断である。

 また、資格確認書の選別発行のためには新たなシステムを膨大な税金でつくる必要があり、自治体にとっては一律発行のほうが事務的にも財政的にも安価で効率的なのだ。実際、本音は一律発行を希望している自治体は多い。愛知県保険医協会の県内自治体に聞き取り(5月)では、「本当は一律でやれた方がいい」「東京の取り組みがうらやましい。効率的だ」との声が大半を占めた。

 こうした事態に対し、慌てた政府は「全員一律に資格確認書を交付する状況ではない」(5/30厚労省)と改めて自治体に通知した。自治体へのヒアリングすら一切せず「必要なし」と強要する法的根拠はどこにもない。地方分権一括法施行以降、省庁の通知はあくまで自治体に対する「技術的助言」であって、判断材料の一つに過ぎない。法律上、国と自治体は対等であり、一律発行するか否かは各自治体の主体的な判断である。国から「指導」される筋合いのものではない。

 事実、衆院厚生労働委員会(6/6)で福岡資麿(たかまろ)厚生労働大臣は、渋谷区、世田谷区の一律交付について「自治事務なので最後は自治体の判断」と答弁。事実上、自治体の判断での資格確認書の全員送付を認めたのだ。

 マイナ保険証一本化とマイナンバーカード保有の強制に待ったをかけるチャンスだ。世田谷区や渋谷区の先行例に続き、自治体の保険者責任を問い、国民健康保険被保険者にマイナ保険証の保有の有無にかかわらず資格確認書を一律発行させよう。自治体議会への質問や、市民請願、自治体交渉を行おう。
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