2025年06月27日 1876号
【急増する大企業の黒字リストラ/強欲資本主義の収奪強化許すな/対案は民主主義的社会主義】
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2025年1月から5月にかけて、上場企業の早期・希望退職募集は前年同期比87%増の8711人に達し、このペースが続けばリーマンショック後の09年(2万2950人)を上回ることが確実といわれる。
今回のリストラは過去と明らかに様相を異にする。黒字企業が中心となって人員削減を進める「黒字リストラ」という新たな現象が急増しているのだ。
パナソニックホールディングス(HD)は3月期決算で3662億円の黒字を計上しながら、国内外で1万人規模の削減計画を発表。半導体大手のルネサスエレクトロニクスなど、リストラ実施19社のうち実に12社が黒字企業という事態が進行している。しかも、対象年齢が30代の若い世代や勤続年数が短い従業員にまで広がっている。「希望退職」とは名ばかりで、追い出し部屋への隔離や退職強要など、実態は企業が狙い撃ちで行う解雇と同じだ。
バブル崩壊(1990年)後やリーマンショック時には、リストラは業績悪化企業のいわば苦肉の選択≠セった。ところが、すでに2019年には希望・早期退職を実施した上場企業の約6割が黒字企業で、削減人数の8割を占めた。大手製薬業界は象徴的だ。中外製薬は18年12月期に純利益が2期連続で過去最高を更新しながら45歳以上の早期退職者を募集。アステラス製薬も純利益35%増という好業績の中、約700人の早期退職を実施した。
パナソニックHDの楠見雄規社長兼グループCEOは「人員に余裕がある状態では生産性を高める創意工夫が起きない」と本音を出す。グローバル大企業は「収益性の低い事業見直し」を名分に短期的な株主利益と経営効率を追求する。リストラは、もはや建前の「生存のため」などではなく、「より多くの利益を上げるため」の手段であることがむき出しになっている。
賃上げ拒否と一体
リストラと一体で労働者を苦しめているのが、長期にわたる実質賃金の低迷だ。技術革新や業務効率化によって日本の時間当たり労働生産性は過去25年間で約30%向上したが、実質賃金はほぼ横ばいか下落だった。米国では生産性が50%上昇し実質賃金は30%上昇している。ドイツ・フランスは生産性上昇率は20%と日本を下回るが、実質賃金ははるかに高くなっている。
その25年間、非正規労働者や中小企業労働者はもちろん、大企業の正社員すら「ベースアップゼロ」が常態化し定期昇給のみで実質賃金が抑制されてきた。企業利益は労働者への分配ではなく内部留保に回され、1998年の120兆円から2023年600兆円と実に5倍増(図)。「黒字リストラ」や賃上げ拒否は、日本のグローバル資本の収奪性が世界でも異常突出していることを示す。

リストラという解雇が日常化し、企業の内部留保が膨れ上がる一方で労働者の実質賃金が下がり続ける社会は、人間がまともに生きられる社会ではない。放置すれば、経済そのものの持続可能性も損なわれる。
いま、利益至上の強欲資本主義から、人間の尊厳を中心に据えた民主主義的社会主義への転換を求めていく時だ。労働者の雇用と生活を守る闘いは社会の未来をかけた闘いとなる。
日産自動車の2万人削減は社会に衝撃を与えた。大企業のリストラは地域経済を破壊する。労働者だけでなく、地域から連帯行動を強化し、社会的な批判の声を強めなければならない。 |
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