2025年06月27日 1876号
【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える/(24)LED化の推進で原発稼働は不要】
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6月6日、運転開始から60年を超える原発の稼働を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が全面施行された。同法によれば、原子力規制委員会の審査や裁判所の仮処分命令で停止した期間を60年に上乗せして運転できる。延長期間の審査は規制委ではなく経済産業省が所管する。関西電力の高浜1号機(福井県)の場合、規制委の審査などで約12年停止しているため72年の運転が認められる可能性がある。
こうした老朽原発再稼働の口実とされるのが、データセンターや生成AI(人工知能)の普及による電力需要の急拡大だ。需要電力量はここ十年以上にわたって下落傾向を示しており、昨年度が8,059億kWhだが、経産省資源エネルギー庁は今後10年間は電力需要の増加が続き、10年後の2034年度の需要電力量を8,524kWh(2024年度比約6%増)と見込んでいる。しかし、データセンターやAIの普及で電力需要が増大するとの予測については疑問視する声も多い。東北大の明日香壽川教授(環境政策論)はこうした予測を「強調されたデータによるミスリーディングな情報だ」と批判する。
ところで、ビルやオフィスなどの施設では電力需要の20〜30%、住宅でも10%以上を消費するのが照明だが、2027年末までに蛍光灯の製造や輸出入が禁止される。これは、地球全体とりわけ発展途上国の環境汚染対策として水銀の使用を規制する「水銀に関する水俣条約」の締結国会議で2023年に決まったものだ。こうした事態を受けて、いまLED(発光ダイオード)への交換が課題になっている。日本照明工業会の調べでは、すでに照明器具全体の63.7%がLED化され、残りのほとんどが蛍光灯とされる。その数は約7億台。とりわけ学校・公共施設など自治体レベルではなお8〜9割が蛍光灯で、政府施設でもLED化は4割に満たない(2023年度)。
蛍光灯1本の消費電力が40h、LEDのそれは11h。コンサルティング会社「あかりみらい」の越智文雄代表は、蛍光灯をLED化するだけで「最大で原発数十基分に相当する」(6/8東京新聞)と述べる。どういうことか。
国内に蛍光灯の照明器具が7億台、1台に2本の蛍光灯が使われている場合も多いので、実際に使われている蛍光灯の本数を10億本と想定すれば、単純計算で(40−11)h×10
億本=290億hとなる。
原発の出力は1?h(100万`h)。290億hは29?hなので、残る蛍光灯をすべてLED化することで削減できる電力は、原発29基分となる。
巨額の費用を使って危険な原発を動かしたり増設するより、まず政府施設や自治体の公共施設での蛍光灯の100%LED化へ財政支出し、さらに民間のLED化を促進する方がずっと効率的に、しかも安全に電力の需給バランスを保つことができる。 (U)
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