2025年06月27日 1876号

【みるよむ(737)/2025年5月24日配信/貴重なハウィゼ湿原の自然/石油開発が破壊する】

 イラク南部の最大の湿原の一つ、ハウィゼ湿原は豊かな自然に恵まれ漁業も盛んで地元住民の生活を支えている。しかし、大規模な石油開発によってその自然環境が破壊されている。2025年4月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 ハウィゼ湿原は数百種の鳥類や魚類の生息地で、ユネスコ世界遺産にも登録されている。漁業や水牛の放牧にも利用され、「何千人もの地元住民にとって重要な生計の源だ」という。

 しかし、この湿原一帯に広がるハウィゼ油田の石油探査と原油生産が進められようとしている。湿地帯で発見された大量の埋蔵量は「支配階級にとって、とりわけ世界的なエネルギー需要の高まりを考えれば、非常に魅力的」なのである。

 イラク石油省の下にあるメイサン石油会社は中国企業のジオ・ジェイドとハウィゼ国境油田の開発・生産の契約を結んでしまった。ある国会議員は「世界遺産に登録されているハウィゼ湿原の保護地域に対する違反行為を引き起こしている」と訴えている。

 レポーターは「この経済的野心は環境破壊という代償を払うことになる」と警告する。石油掘削や探査作業によって、湿原を干上がらせたり、「化学物質と産業廃棄物で水と土壌を汚染する」事態が進んでいる。

 映像は、農民が大切に飼育してきた水牛の死体が水面に浮いている場面も映し出す。石油開発による環境破壊を象徴しているようだ。

抗議する地元住民

 地元の住民は抗議の声を上げている。掲げられた横断幕は「水を犠牲にして石油を掘っている」「3年間続く干ばつはすべての村を襲い、政府の約束は何一つ果たされていない」「干ばつをとめろ…生命そのものがとまってしまう前に!」と訴えている。

 サナテレビはグローバル資本による環境破壊に反対しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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