2025年06月27日 1876号

【読書室/防衛省追及/石井暁著 地平社 1800円(税込1980円)/戦争に向かう国の裏側を暴く】

 著者は「戦争に反対し、平和を守る」―それが記者としての最も重要な仕事で、そのためには軍事組織である自衛隊と防衛省を監視し報道することが一番の近道だと考え、30年以上防衛省担当記者をつとめてきた。

 本書は、安倍政権が「戦争のできる国」づくりを加速した2014年以降の記事を収録し、戦争準備が進む実態を明らかにしている。

 戦後の自衛隊は「文民統制(シビリアンコントロール)」として、防衛省設置法でも官僚(文官)が自衛官の行動を指示する「文官統制」の仕組みが定められていた。しかし、その官僚の指示権限を削除する法改定で、防衛大臣の下、官僚と自衛官は対等とし「文官統制」を否定。著者は、防衛省官僚や自衛隊員自身の「軍部が独走した戦前の反省がない」との声と共にこの危険な動きを報じた。

 制服組(現役軍人)の独走は、辺野古新基地の日米共同使用密約報道でも明らかになった。沖縄タイムスと著者ら共同通信社の共同取材で暴露された密約は、陸上自衛隊幹部と米軍によって結ばれ、防衛省官僚には知らされていなかった。「台湾有事」を想定し、米海兵隊が南西諸島を軍事拠点として移動しながら中国軍を封じ込め、自衛隊が後方支援を行う共同作戦の詳細を改めて伝えている。

 また、イスラエルとの攻撃型ドローンの共同開発や自衛隊情報機関のNS対策などスクープも紹介される。

 秘密保護法制定以降、防衛省取材に困難を感じることも多くなったが、内部から取材に協力してくれる良心派は少なからず存在すると言う。著者は、ジャーナリストとして国民の知る権利を守り権力の監視を継続する決意を記す。 (N)
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