2025年06月27日 1876号

【1200人が司法をただすヒューマンチェーン/闘いつなぐ連帯で最高裁完全包囲】

 「原発事故の国の責任を否定した6・17最高裁不当判決を正そう!人権の最後の砦はどこ行った!」―6月16日、最高裁周辺に怒りの声が渦巻いた。原発・公害・安保法制などをテーマとする訴訟や原発再稼働反対に取り組む22団体が呼びかけた最高裁包囲行動。昨年の千人を超えるのべ1200人以上が集まった。

 『民衆の歌』の合唱が、最高裁周囲に設置された34台のスピーカーから流れる。参加者は口ずさみながら所定の場所に向かう。「個人参加、フリーの行き場はどこ?」と本部で尋ねる人も。

 正午、多摩川太鼓を合図に行動がスタートした。水戸喜世子実行委員会共同代表が「腐った現状を変える力は主権者である私たち以外にない。あなたの隣の人と真剣に話し合い、最高裁を大掃除する具体的な目標を定め、今すぐ取りかかろう」と開会宣言。原発被害者訴訟原告団全国連絡会、住宅追い出しを許さない会、安保法制違憲訴訟全国ネットワークなど20の団体から2分間スピーチが続く。一言も聞き逃すまいと集中する。

 合間には「最高裁は 公正中立!/原発廃炉 今すぐ廃炉!/戦争止めろ 命を守れ!」と、リズミカルなコールに全員が口を合わせ、最高裁に向かって3度にわたりヒューマンチェーンがつながった。

忖度判決連続に怒りの声

 東電旧経営陣の責任を否定した6月6日の東京高裁判決について、株主代表訴訟原告代表の木村結さんは「津波対策をするほどの切迫感のある状況ではなかった、と感覚に対策をゆだねた。福島原発事故の責任を誰ひとり取らなくて良いとした判決は到底許せない」と怒りをぶつけた。東海第2原発運転差止訴訟原告団の大石光伸共同代表は「一審水戸地裁は福島事故を教訓にすれば『東海第二発電所原子炉を運転してはならない』としたが、6・17最高裁判決以降、差止訴訟でも国の原発回帰政策に忖度(そんたく)した判決が次々出されている」と不信を表明した。スピーカーを通し、最高裁批判は建物内の判事に届く。

 国会議員も立憲・共産・社民・れいわ4党が同じ2分で連帯あいさつし、最後は、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、戦争させない・憲法壊すな!総がかり実行委員会の連帯のあいさつで締めくくった。

 「私たちは、司法があるべき姿を取り戻し、かけがえのない人権が守られるまで、手を繋いで闘いを続け、次世代にバトンを繋いでいくことを改めて誓う」との集会決議を拍手で確認した。

 司法の劣化を食い止めるため直接最高裁を攻め上げ、共通の目標に向かって幅広い連帯を築いていく意義ある行動となった。

共同行動が最高裁変える 15日 シンポやデモも

 前日15日にはプレ企画のシンポジウムと都内デモ。

 シンポで安原幸彦弁護士は「ハンセン病では“裁判を受ける権利”を訴えて裁判官を動かした。HIV訴訟では差別があったが、川田龍平氏が声を上げ、裁判が不利でも政府を変えた」など、関わった裁判の経験から闘いの教訓を述べた。日本の司法の実情を批判したジャーナリストの後藤秀典さんは「皆さんの共同行動は、最高裁を変える力になっている。闘いを繋ぐ団子の串の役割が今大切だ」と運動団体に要望した。

 国連元特別報告者のヒメネス=ダマリーさんからはビデオメッセージ。「日本政府は勧告を受け入れず、改善も見られない。国内避難民の人権を保障し尊厳ある生活を確保することは第一義的義務。勧告は依然有効で履行される必要がある」と見解を伝えた。

 続くデモは秋葉原方面へにぎやかに行われた。「月桃の花」歌舞団は沖縄民謡に乗せて行進し、コールと一体の太鼓もリズミカルだ。「原発事故は国の責任/原発再稼働反対」アピールのみこしも場を盛り上げる。

 社会派ロックの生田バンドは、コールに合わせたバックミュージックを取り入れ、「韓国のコンサートデモに学び、周囲からも楽しそうで共感されるデモにしたい」と取り組んだ。参加者も足取り軽く笑顔で沿道の人にアピールした。



MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS