2025年07月04日 1877号
【参院選/いのちと暮らしを守る候補へ/軍縮・消費税廃止・ジェンダー平等を争点に/自公・補完勢力に勝利する共闘を】
|
参議院選挙が行なわれる(7月20日投開票)。重要な選挙だ。昨秋の衆院選で少数与党に転落した自公政権は予算案修正に応じ、政策変更は可能であることを実感させた。問題は与党にすり寄る政権補完勢力の存在だ。参院選では市民要求を実現できる候補を選び、命と暮らしを守るための政権交代、政策変更の実現に前進しよう。
32の1人区で勝利を
まず国会の状況だ。参議院では248議席のうち自公が140議席を占めている。そのうち今回改選は66議席。自公で16議席を落とせば過半数割れ、参院でも与党だけでは可決できない状況が生まれる。衆参で自公が少数となれば、政権交代は現実的となる。


ただ、野党の中にはほぼ自公と同じか、自公以上に危険な政策を主張する政党があるから要注意だ。時事通信の世論調査(6/20)によれば、衆院選で注目された国民民主は大きく支持率を下げ、維新も下げた。支持を伸ばしたのは参政党だ。「日本人ファースト」を掲げる参政は、「國體(こくたい)(天皇制)」を堅持し、外国人受け入れに反対する「トランプ流」をめざす右翼政党だ。
平和と民主主義、市民要求にこたえる野党候補の当選をめざし、自公を少数に追い込まねばならない。
参院定数は比例代表100、選挙区148。3年ごとに半数が改選され、比例代表50議席、選挙区で74議席(今回は別に東京補選1)が争われる。都道府県を基本とする選挙区45(鳥取・島根、徳島・高知は2県で1選挙区)のうち1議席を争うのは32選挙区だ。衆院の小選挙区同様、市民が野党共闘を牽引し、政権批判票をまとめることは重要だ。
国政選挙で野党共闘を呼びかけている「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)
が、各政党に政策要求を提出した。立憲野党勢力による政権交代とその政権が実現すべき「『信じられる未来』3つの方向性」を示している。これを手がかりに、選挙の争点を確認していこう。
社会保障を優先せよ
真っ先にあがるのは「憲法や市民生活を無視する軍拡は許さない」。
予算国会で軍事費急増を問題にした野党は限られていた。特に、「敵基地攻撃能力の保有」が当たり前であるかのように、ミサイル基地が増設されている。ミサイルの長射程化、配備・貯蔵に一貫して反対するのは共産党、社民党だった。参政党は中国の脅威をあおり、「先手防衛」を説く。与党の別動隊だ。
軍事費は2027年までの5年間で倍増、対GDP比2%を政府目標としている。それ以後も増額方針だ。だが、先行するNATO(北大西洋条約機構)は5%目標を決めようとしているが、スペインは「福祉国家の世界観とは合わない」と反対姿勢を示している。軍事費優先の支出は、公共サービスの提供を縮小させるということだ。
日本の場合も同じだ。軍事費(8・7兆円)はすでに政府一般歳出(68・2兆円)の12・8%を占めている。この割合が高まれば、社会保障費などの割合が低下するのは自明のことだ。
軍事費拡大の下で、年金支給水準引き下げ、生活保護基準の引き下げなどが相次いできた。政府は「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)を保障しなければならない義務があるにも関わらずだ。
税金をどう配分するのかが政策の違いとなる。福祉や教育、医療に優先配分するのか、破壊と殺戮(さつりく)の準備にまわすのかが問われている。軍事費を優先する政策など許されない。
不公平税制をただす
2つ目の方向性は「市民の生活と命を守る経済政策」だ。物価高、不公平税制から「裏金政治」まで多くの項目があがる。なかでも消費税減税は大きな争点だ。
自公以外、野党の公約は何らかの消費税減税案を掲げている。消費税廃止が物価高に対する効果的な政策の一つであることは間違いない。当初、否定的だった立憲民主も「原則1年間、最大2年間食品消費税ゼロ」とした。消費税維持の与党との対比は明確だ。だが、問題なのは不公平税制の是正ではなく「消費税廃止財源」に議論が集中していることだ。
税は、各人の能力に応じて負担する応能負担原則を貫くことが公平な負担であり、憲法の理念だ。消費税は低所得者ほど負担が重く、かつ生存権保障に必要な最低生活費非課税原則にも反する。一時的に減税すれば済むものではない。廃止すべきものだ。
「消費税減税」で減る税収をどうするのか。国民民主、れいわ、参政は「赤字国債」を容認する。維新は「社会保障削減」という。この発想は消費税が「社会保障の財源」であるかのような虚構がベースにある。しかし、消費税は使途が社会保障に限られた目的税ではない。軍事費にも使われている。消費税廃止は税の使い方の問題とは無縁であり、税負担構造を変えることなのである。
消費税は法人の税負担を減らすために導入されたと言える。法人税引き下げは企業利潤を増やし、消費税が労働者の家計を圧迫した。消費税を廃止し、大企業や富裕層に応分の負担を求めることが、不公平税制をただす第一歩だ。



闘いを前進させる選択を
3つ目の方向性は「ジェンダー平等・人権保障・学問や教育の重視」。
選択的夫婦別姓制度、同姓婚制度の整備とあらゆる差別禁止も重要政策だ。選択的夫婦別姓制度は、与党間でも意見が違う。立憲民主、国民民主、維新はそれぞれ法案を提出したが、一致はしていない。維新は「旧姓使用」を拡大する案で、自民党に近い。
選択的夫婦別姓制度を女性差別の解消、あらゆる差別の禁止の政策の一部としているかどうかにある。民主主義を貫く政党であるか、排外主義的政党かのリトマス試験紙だ。
他にも政党間で重要な政策の違いはある。有権者が政策により政党・候補者を選ぶことが、民主的な選挙の前提である。市民連合は「フェイクニュースの捏造(ねつぞう)・拡散など社会の分断と排除をもたらす言動を許さず、民主的な市民社会の基盤を守る」ことも政策の一つとしている。SNSに流されるフェイクニュースが選挙結果に影響を与えている。事実確認を怠ることはできない。
市民と立憲野党共闘候補の実現・当選を最後まで追及しよう。MDSは選挙区で日本共産党を、比例代表では社民党大椿ゆうこ、山城ひろじ候補を支援する。各地で進む軍事化の動きと闘い、労働者の権利切り捨て・不当解雇との闘いを前進させるためだ。反原発・被害者補償を勝ち取り、カジノを止めるためにだ。 |
|