2025年07月11日 1878号

【311子ども甲状腺がん裁判/いわき市出身の20代女性が追加提訴/「事実を事実として認めてほしい」】

 「311子ども甲状腺がん裁判」の第14回口頭弁論が6月25日、東京地裁103号法廷で開かれた。

 井戸謙一弁護士は準備書面で、日本内分泌外科学会の最新情報などをもとに甲状腺がんの増大速度や再発率を示し、福島の甲状腺がんが被告東京電力の主張する「潜在がん」ではあり得ないことを指摘した。(プレゼン動画が https://www.311support.net/ で公開されている)

 今回期日に先立つ6月3日、新たな原告が追加提訴した。提訴したのは、高校3年生の時に甲状腺がん手術を受けた20代の女性、瞳さん(仮名)。事故当時は浜通りに住む小学校6年生だった。以下、提訴直後の記者会見における瞳さんの発言を紹介する。

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 がんの告知を受けた時、医師はこう説明した。「甲状腺がんはゆっくり大きくなる。原発事故前からもともとあったがんだと考えられる」。私は医師の説明を信じた。告知前から、「甲状腺がんの子ども」を反原発運動に利用する大人がいることに怒っていた。

 「甲状腺がんの子ども」としてどう在ればいいか。

 第一に、自分の尊厳を誰にも奪わせないと誓った。

 第二に、手術の傷跡が残ったとして、周りから聞かれた時は「原発事故の影響じゃない」と説明できるようになろうと思った。

 でも、調べたり本を読もうとすると、体が固まり涙が出て、先に進めないまま手術から8年が経った。そんな中で、裁判のことを知り、勇気を出してコンタクトを取り、訴状を読んだ。

 今まで知らされなかった事実がたくさんあった。決定的だったのは、小児甲状腺がんは100万人に年間1〜2人しか見つからない希少ながんと知ったこと。「もともとあったがん」と説明してきた私は、国や福島県、東電に都合の良い存在だったことがわかった。

 私は最後の決断をするため、前回の口頭弁論に初めて傍聴に行った。そして、実際に闘っている原告や、信念を持ってこの問題に関わっている方々の姿に接し、提訴を決めた。

 裁判を通して甲状腺がん患者の命と人権が守られ、サポートや正しい情報にアクセスできる社会に変わることを願っている。「事実が事実として認められること」を望み、提訴する。

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 瞳さんの審理は次回9月17日の口頭弁論期日から併合される見通しだ。

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