2025年07月18日 1879号
【未来への責任(419)/日韓条約60年 「つながり直し」へ】
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1965年日韓条約・請求権協定の締結60周年を迎え、6月21日、東京の明治大学で「日韓条約60年と植民地主義を問う―私たちがつながり直すために―」が開催された。
基調講演で同志社大学教授の太田修さんは日韓請求権協定の3つの問題点を指摘した。
一つ目は、植民地支配責任・戦争責任を不問に付した点だ。太田さんは「植民地支配正当化論は、欧米の旧植民地支配帝国も共有していた。植民地支配の責任を不問にするという点では共犯関係にあった」と批判した。
二つ目の問題点は、植民地支配責任・戦争責任を果たすという課題が「経済協力」によって覆い隠された点だ。1960年に外務省アジア局の主導で創案され、「過去の償い」ではなく「韓国の将来の経済及び社会福祉に寄与する」ものにすり替えられたのだ。
三つ目の問題点は、法・条約の暴力である。太田さんは「被害当事者は、権威主義体制下において、被害を記憶の片隅に追いやり、忘れようとした。国家は当事者の意思とはかかわりのないところで法・条約を作り上げ、その後も日本政府は当事者と市民の真実究明、責任追及の声を法・条約によって封鎖し続けた」と批判した。
当事者らが提訴した裁判や支援集会での証言は「被害者として語られる客体であった当事者が徐々に主体化し、尊厳を取り戻していく過程」であったと太田さんは指摘する。太田さんは「問題の核心は、法・条約によって『解決済み』か否かにあるのではなく、植民地支配責任・戦争責任が果たされたかどうかだ。真実究明、責任追及・応答、謝罪と名誉回復、賠償、歴史記憶の継承により、実質的に法・条約を作り直していくことは可能だ」と提起した。
太田さんの講演を受けて、「日韓条約と私」というテーマで若い世代のパネルディスカッションも行われた。日本人の一橋大学院生は「日韓条約は自分自身の朝鮮認識を規定しているもの。韓国スタディツアーで一緒になった在日朝鮮人の当事者からの問いかけから、植民地支配の歴史が欠落していることに向き合うことになった」と語った。
お父さんが韓国からの留学生だったという東京大学院生は「私は半分日本人、半分韓国人だと思ってきた。高校生のときに、在日コリアンに関心を持ち、その生活の中に自分自身が見てきたのと同じ風景があることを知り、自分のルーツが韓国というか朝鮮半島にあることに気づいた。しかし、在日社会の中で、朝鮮半島の二つの体制のうち、韓国だけが正当性を与えられ、朝鮮民主主義人民共和国が見えなくさせられている」と話した。
日本と韓国は年間1千万人もの人が行き交う。歴史的関係にも踏み込んで「つながり直し」に格闘している若い世代の発言に希望を感じた。そして、その営みの先にこそ「実質的な法・条約の作り直し」が見えてくると思った。
(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好) |
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