2025年07月25日 1880号

【パレスチナ解放への展望/イスラエルと共謀する欧米日の責任を問う/非武装の闘いと国際連帯で】

 イスラエルが続けるジェノサイドは欧米日など主要国の共謀によるものだ。軍事占領、入植者植民地主義、アパルトヘイトが続くのもそうだ。イスラエルだけでなく欧米主要国政府の責任を追及する闘いが重要性を増している。現地の非武装の闘いと自国政府・企業の責任を追及する国際的な闘いの連帯を強化しよう。

ジェノサイド支える世界システム

 トランプ政権は7月9日、国連人権理事会のフランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者に制裁を科す方針を示した。「反ユダヤ主義をまき散らし、テロ行為への支持を表明した」(ルビオ国務長官)というのだ(7/11NHK)。

 イタリアの弁護士アルバネーゼ報告者は、「あまりに多くの企業がイスラエルの違法占領、アパルトヘイト、そして今やジェノサイドに伴う経済から利益を得てきた」と指摘し、民間企業の責任を問わなければ、ジェノサイドを容認する世界システムを解体できないと報告書に書いた。F35戦闘機のロッキードマーティン社をはじめマイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンなど米企業を名指しし「イスラエルの占領経済をジェノサイド経済へと転換」したと非難している。

 ジェノサイドで利益を上げているのは米企業だけではない。兵器生産にロボットを提供している日本のファナック、パレスチナ人家屋の破壊用に重機を提供する韓国HDヒュンダイ重工業。パレスチナ人の土地を奪い農業や酪農を経営するイスラエル食品コングロマリット「トゥヌーバ」の経営権は中国企業「ブライト・フード」がもつ。

 イスラエルがジェノサイドを続けられるのはそこから利益を得る企業、投資家や官民の機関があるからだと明確に指摘したことに、米政権は激怒したのである。

BDS運動20周年 大きな成果

 アルバネーゼ報告書の指摘する「世界システムの解体」を実践してきたのがBDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)運動だ。

 2005年に始まるBDS運動は7月9日、20周年を迎えた。パレスチナBDS全国委員会(BNC)は「国家や企業、諸機関によるイスラエル政権との共謀を終わらせるBDS運動への連帯の意味を改めて明らかにする」との声明を発している。その中で「パレスチナ人の権利を主張する法的承認を得ること」が運動目標と再定義した。

 パレスチナ人の権利とは占領終結、アパルトヘイト終結、帰還権・補償の実現である。パレスチナ人1200万人の50%は国外難民であり、ガザ・西岸地区の占領地には38%、イスラエル国内に12%が居住する。38%の中に国内難民が含まれる。つまりパレスチナ人の大半は国内外の難民であり、BDS運動は、軍事占領、アパルトヘイトとの闘いと共に帰還権の実現に向けた国際連帯の必要性をあらためて強調した。

 20年にわたるBDS運動は多くの成果を上げてきた。120か国にわたる反アパルトヘイトネットワークが構築され、52か国がイスラエルに対する軍事禁輸措置を公式に承認した。フランス、モロッコ、スペインなど多くの国の運輸・港湾労働者や市民がイスラエルへの武器輸送阻止のキャンペーンを拡げた。

 成果はこれにとどまらない。イスラエルとの共謀を断つ各国での闘いが国際的な連帯を作り出している。


民主的で世俗的な国家樹立へ

 国際連帯を強化しようとパレスチナ及びパレスチナに連帯する団体代表が来日する。7月26〜27日に神奈川県相模原市で開催される2025ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)に参加するためだ。

 昨年9月に結成されたUWFPP(パレスチナ人民防衛統一労働者戦線)。イランやヨルダン、スーダン、エジプトなど中東・北アフリカ地域から33の労働組合や進歩的・民主団体が参加している。来日するサミール・アディル事務局長はイラク労働者共産党書記長として、03年に始まる米国のイラク占領下で反占領・民主化闘争を組織してきた。

 PWSU(パレスチナ労働者闘争ユニオン)のモハマド・アローシュ委員長も来日する。主にパレスチナ西岸地区の労働者を組織する。いま西岸地区の多くの労働者はイスラエルでの職場を失い、違法入植地で働くしか選択肢がないと言われている。

 7月2日、ネタニヤフ政権のリクード党閣僚15人と国会議長が、国会が夏期休暇に入る7月末までに西岸を併合するよう政府に書簡を出した。合わせてパレスチナ自治政府から離脱を求める部族長の談話を流した(7/6エルサレムポスト)。

 ヘブロンの8割近くを支配するという部族の長がイスラエルと協議し「ヘブロン首長国」をつくるというのだ。トゥルカレムやラマラなど6つの地域をあわせ「首長国」をつくる構想で、ネタニヤフ政権の経済大臣が仕掛けたという。パレスチナ自治政府の不人気を煽り、分断を狙った。あくまでパレスチナ国家の樹立を阻止するというのだ。

 パレスチナ解放闘争はイスラム主義や部族支配への批判も欠かせない。イラク占領と闘った市民レジスタンスの経験がよく示している。

 「民主的世俗的なパレスチナ国家の独立」を掲げるPLO(パレスチナ解放機構)はいくつもの政党の連合体として1964年に結成された。パレスチナ人の唯一の代表機関として国連で認められているが、93年のオスロ合意後、自治は進展せず、むしろ国際法違反であるイスラエルの入植地拡大を止めることができなかった。イスラエル、西側諸国の共謀に対し、PLOを支援する国、闘いが圧倒的に弱かったためだ。

 アローシュさんは政党PPSF(パレスチナ人民闘争戦線)の政治局員でもある。PPSFはPLOに加わり、自治政府の機能強化に努力している。

 イスラエルのジェノサイドを止め、パレスチナ解放を勝ち取るために、自国政府・企業の責任を追及する闘いを強化し、固い国際連帯を築こう。ZENKOin相模原はその一歩となる。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS