2025年07月25日 1880号

【参院選/原発課題スルーでいいのか/問われるべき「国策」推進の是非/注目される新潟選挙区】

 今参院選では、多くの政党もメディアも、全くと言ってよいほど原発をめぐる課題を取りあげなかった。
 福島原発事故から14年、廃炉のメドは立たず、放射能による土壌汚染も放置されたまま。生業は元に戻らず、福島からの「避難者」は今も2万4千人を超え(区域外避難者を除く)、子どもたちの甲状腺がんは多発している。事故など無かったかのようだ。

自民が「国策」で推進

 原発は、過去も今も自民党政権が進めてきた。国策で推進し、国の機関・原子力規制委員会(以前は原子力安全・保安院)の許可なしには動かせないが、いざ原発大事故が起きたら政府は原発関連訴訟でも“国に責任はない“と逃げた。これだけでも、命をないがしろにする自民党とそれを補完してきた公明党は断罪されるべきだ。

 自公政権は第7次エネルギー基本計画(2025年2月)では「原発依存度を低減する」から「原発の最大限活用」へ舵を切り、「再稼働の加速に向け官民挙げて取り組む」とした。使用済み核燃料の処分問題が行き詰まる中、世界でも例を見ない老朽原発の稼働に踏み切った。原発施設がテロ・ミサイル攻撃の対象となる時代にあって、危険極まりない施設にエネルギー政策を依存させている。

 参院選でも、その国策推進か、再生可能エネルギーへの抜本的転換か、本来鋭く問われるべき争点だ。未来の子どもたちのためにも、環境といのち・健康を守る重要な課題だ。

 各政党の立場は、日本維新の会は原発依存を高める、国民民主党は原発再稼働と新増設、参政党も再エネ推進ストップの方針だ。対して、立憲民主党は原発に依存しない、共産党・社民党は原発ゼロ、れいわ新選組は原発即刻廃止を打ち出している。ところが、多くが重要争点として取り上げず、選挙全体では原発課題がスルーされる状況となった。

柏崎刈羽再稼働の攻防

 そんな中で、注目されるのが柏崎刈羽(かりわ)原発を抱える新潟選挙区の動向だ。政府は福島原発事故の加害者・東京電力の再稼働をにらみ、稼働しない場合の立地自治体への電源交付金を減額、一方でインフラ整備の補助金支給をちらつかせて揺さぶりをかけた。桜井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長は再稼働「同意」を表明した。政府は発生が危惧される地震評価をあいまいにし、実効性のない「避難計画」を承認して東電を後押し。福島事故に終止符を打ち、本格的に原発に回帰できるよう、この再稼働にかけている。。

 東電は昨年9月、満タンに近づいた使用済み核燃料を青森県むつ市の中間貯蔵施設に引き取らせた。1〜5号機の廃炉と引き換えに6・7号機の再稼働を計画。6号機は原発燃料装荷の作業を6月25日に終え、いつでも稼働できる準備を整えた。国と東電は外堀≠埋め、あとは県知事の合意取り付けに絞っている。

県民投票請求署名の力

 新潟選挙区は1人区のところ4人が立候補し、自民党(公明党推薦)と立憲民主党の事実上の一騎打ちとなっている。立民の現職・打越さく良候補は「再生可能エネルギーによる分散型エネルギー社会。県民合意のない再稼働は認められない」と主張。自・公の中村真衣候補は「日本の電力需要、地球温暖化対策を考えれば再稼働やむなし」。参政の平井恵里子候補は再エネ拡大反対の立場だ。



 再稼働の是非を問う県民投票条例の直接請求署名約14万3千筆の声は自・公、参政を揺るがすだろう。

 県民投票条例案は4月18日に県議会で否決された。だが、国民民主党玉木雄一郎代表が「国の責任があるので県民に問うことはおかしい」と条例案反対を主張しても現地の国民民主県議は賛成に回った。昨年10月の衆院選では、新潟県5区すべてで自民候補が落選し、柏崎刈羽を抱える新潟4区では再稼働反対の立場をとった米山隆一元県知事(立民)が当選した。県民投票となれば再稼働が困難になるのは確かだった。

 東電に原発を動かす資格はない、地方の将来は住民で決める≠ニ、権力中枢と真っ正面から闘う新潟県民の思いは、参院選にも反映されるに違いない。新潟への注目が必要だ。



MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS