2025年07月25日 1880号
【労災申請した若者の不当解雇を跳ね返す〜なかまユニオンがN社事件勝利を祝う会〜】
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7月5日、なかまユニオン第28回定期大会後、「N社事件(注)勝利を祝う会」が開催され、30人以上の組合員が勝利を手にした当事者と手作りハンバーガーやお祝いケーキ、くす玉、花束で勝利を祝った。
多彩な運動で取り組む
なかまユニオンの井手窪啓一委員長が争議勝利の意義を語る。
―この事件は事故も多い過酷な現場で労災を使ったら解雇された事件。職場復帰にまでは至らなかったが同等の解決金をとり、「会社都合退職」にした勝利解決と言っていい内容。会社は団体交渉を1回やったらもうやらないという非常にわかりやすい団交拒否をした。
労働委員会や裁判に取り組んだが、それ頼みでなく多彩な行動をしたという特徴がある。2週に一度を目標に会社前に行って就労させろと要求する行動に取り組んだ。またおおさかユニオンネットワークで大阪総行動として40〜50人で3回取り組み、3回目には会社の中に入り、出てきた社長の父とやりとりをするなど、会社としては非常に嫌な争議だったのではないか。裁判闘争でも相手側弁護士が毎回毎回「宿題」ができずに裁判長から怒られる(書面を出さず、3〜4回裁判が空振りとなった)。相手を追いつめる的確な弁護活動をやってもらった。裁判官の会社への心証が非常に悪くなった中で判決前の解決を勝ち取ったと言える。―
労災申請は労働者の権利
普段あまりスピーチをしない当事者Aさんからも争議を振り返って思いがあふれた。
―私個人としては決して甘くはなかったなと感じている。7年前、N社に入社、配属された開発技術部から3年後、製造現場に部署異動。ハンダを溶かす非常に暑い作業現場で、体重が5キロ減り、熱中症になって倒れることもあった環境で懸命に厳しい労働に励んでいた。溶けたハンダが飛んできて服を貫通して火傷することもしょっちゅうあった。労災は使わずに我慢していたが、機械の老朽化から生じるミスを社員のせいにしているのではないかと疑念。ミスで減給の懲戒処分を言われた時、相談先で労災は遠慮せずに使ったらよいとアドバイスを受け、2年前の3月にはじめて火傷で労災を使った。
労災を使ったことで「作業着が汚い」「安全具のつけ方が悪い」など反省文を書かされたが、むしろ反省文によって会社の不当性が証明できるのではないかと感じた。
その後会社のボーリング大会に15分前に来なかったことで叱責され反省文、指の骨折で労災を使った翌日、社長から「仕事もできないのに労災まで使って会社としてすごい迷惑。3か月だけ課題を与えるからこれができなかったら強制的に解雇する」と言われた。結論としては、労災を使ってから、社長面談などで社長自身がぼろを出してそれを証拠として押さえていたから解雇については勝てた部分があったのかなと思う。
支援に感謝
こちらの主張をうまくまとめてくださった波多野進弁護士、團野(だんの)彩子弁護士ありがとうございました。
同時並行でやっていた社前就労行動や総行動に参加してくださった方々ありがとうございました。N社との争議内容がなかまユニオンの今後のご参考になればと思います。―
裁判を担当した波多野弁護士や就労闘争に参加してきた組合員でZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)森厚子さんからもお祝いの言葉が述べられた。
N社不当解雇争議
各種ハンダを開発、製造販売するN社の製造現場で働く若者労働者が労災を申請したことで不当に解雇された事件。会社は第1回団体交渉後、団交を拒否、なかまユニオンは就労闘争や大阪総行動、裁判、労働委員会闘争に取り組み、団交拒否に対する府労委勝利命令、裁判での勝利和解を勝ち取った。
(Aさん勝利への経緯)
2018年7月 入社
2023年4月 現場で指を骨折し労災申請すると社長が呼び出し解雇に言及。なかまユニオンに相談/6月 解雇予告通知/7月14日 第1回団体交渉、その後拒否/7月21日 Aさん解雇/9月 社前行動開始/11月 裁判第1回期日
2025年3月 「団体交渉に応じよ」と府労委命令/3月17日 勝利和解/4月3日 最後の団体交渉で団交拒否の謝罪文を手交。
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