2025年08月01日 1881号
【2025参院選 自公過半数割れ/政権批判票の受け皿となる/資本主義に決別する政策を】
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2025参院選の結果、自民・公明の議席が過半数を割った。自民党政権が衆参両院で少数与党となるのは1955年の結党以来初めてのことだ。有権者は長年の自民政治にNOを突き付けたのだ。だが、政権批判票は必ずしも自公政治を転換させる勢力へと集まっていない。少数与党は「野党」に「協力」を求めざるを得ないが、それは右派勢力が政権に近くなるということだ。一層警戒が必要だ。
自公惨敗
自民党は改選52議席(選挙区33、比例19)のうち13議席を落とした。公明党は14議席が8議席に減った。選挙前141議席(定数248)の与党は122議席に。昨年10月の衆院選に続き、参院でも過半数を割り込んだ。これで、衆参両院とも与党提出法案は単独で成立させることはできなくなった。

投票率は58・51%。3年前、6年前からは上昇した。この中で政権批判票はどう表れたか。

政党支持の傾向を示す比例代表を見る。投票総数は6年前(投票率48・80%)に比べ約850万票、3年前(同52・05%)からでも約550万票増えている。総投票数が増えている中で、自民票は6年前から510万票、3年前から560万票減っている。固い組織票の公明党も100万票以上減だ。
自公政権から大量の票が離れた。急激な物価高、実質賃金の低下、生活苦が拡がる一方で、自民は裏金にまみれ、清算役の石破も「自浄能力」のなさを露呈しただけだった。有権者は政権に期待するものは何もないと突き放したのだ。
「野党」は野党か
では、政権から離反した票はどこへ向かったのか。
野党第1党の立憲民主党は3年前から約56万票増えてはいるが、6年前に比べ約58万票減。しかも、昨年の衆院選で得た比例票合計からは500万票以上も減らしている。今回、立民の議席数に増減はなかった。政権批判票は野党第1党に向かわなかった。
明らかに議席を伸ばしたのは参政党で、13議席増。国民民主党も13議席増。他に保守党が2議席、れいわ新選組、日本維新の会が1議席増やしている。
参政党は比例代表で立憲、国民と同じ7議席、742万票を得た。3年前から約560万票増やしている。国民も3年前から440万票増。他に比例票を増やしたのはれいわ新選組150万票。保守党300万票。
今回の選挙について、参政党の神谷宗幣(そうへい)代表は「既成政党か新興政党かの選択だ」と訴えていた。与党も野党も含め「古い政党」が今の危機をつくってきたのだから、現状を変えるには新しい政党に支持をという理屈だ。
従来の「保守対革新」、まして「右対左」が意味した政策の違いをあいまいにする。維新がかつて「身を切る改革」を掲げ既成政党を「敵」として票を集めた手法に似ている。すでに維新は「既成政党」となり、350万票を減らしたが、「改革」の名で新自由主義を進め、格差を一層拡大してきた現実を見なければならない。
今回の大きな票の流れはこうだ。与党から離れた550万票と投票増の550万票を合わせた1100万票は、この多くの部分が、「減税、経済活性」も掲げた国民、参政、保守に吸収されたと言える。本来、共産党や社民党、少なくとも立民へ向かうべき自公批判票が、そこには届かなかった。
「古い、新しい」が選択の基準になることはない。あくまでも対立軸の明確化、政策の具体化が出発点だ。

沖縄・新潟の勝利
自公批判の政策課題、対立軸が明確な選挙区を見る。
沖縄選挙区。定数1に5人が立候補。事実上、自民対「オール沖縄」の一騎打ちだが、ここに参政党が絡んだ。投票率は56・75%。3年前を6・19ポイント(7・2万票)上回った。オール沖縄の高良沙哉(さちか)候補が自民候補に3万3千票余(5ポイント)の差をつけて当選。3年前は自民候補にわずか3千票弱(0・5ポイント)の差での勝利だっただけに、今回差を広げたのは大きい。
参政は3年前の得票率3・9%を今回19・5%(12万6千票)に伸ばしている。自民が減らした約4万票、オール沖縄の減らした約9千票、それを大きく上回る票を掘り起こしたことは間違いない。
だが、代表神谷は「日本軍は沖縄県民を守るために戦った」と街頭演説で語った(7/10)。天皇制を守るための軍隊であり、沖縄県民を捨て石にした作戦だったことを隠している。これが参政党の歴史認識だと悪びれる所はない。
「軍隊は住民を守らない」。これが沖縄戦の教訓であり、基地建設反対が民意なのである。オール沖縄はそれを守った。
新潟選挙区。定数1を4人の候補が争った。事実上、自民対野党統一候補の争い。争点は原発再稼働だ。ここでも参政党が19%の得票を得ているが、立民の打越さく良(うちこしさくら)候補が自民新人候補に約1万票(1%)の差をつけた。3年前、自民が勝利した選挙区だけに現有議席を維持したのは大きい。
32の1人選挙区で自民は14勝しかできなかった。三重や宮崎など自民を追い落とした選挙区は実質的な野党統一になっている。政策課題を明確にし、情緒的な扇動では解決しないことを示すことが、政権批判票の受け皿となり、極右の浸透を許さない力となる。
石破は退陣せよ
自民党石破茂総裁は衆院選、都議選、参院選と自民大敗が続く中でも、続投を表明している。自民党内には「石破おろし」の動きがあるものの、誰も少数与党の苦労はしたくないのが本音だ。これが自民党政治の腐敗した姿だ。物価高や経済格差など解決すべき課題をおざなりに、自己保身が優先する。有権者の審判に従い、即刻政権を明け渡すべきだ。
今すぐに解決すべき課題がある。ウクライナ、パレスチナで起こっている戦争を止めることだ。日本政府は大きな役割を果たすことができるはずだ。物価高、経済政策も待ったなしだ。経済格差の解消には、新自由主義政策の転換、不公平税制抜本的是正が必要だ。
自公政権へのNOは資本主義体制NOのサインである。極右の影響を断ち、民主主義的社会主義への道を歩み出すためにも、政権交代を迫ろう。
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