2025年08月01日 1881号
【ミリタリー/沖縄戦の継承≠ェピンチ/旧日本軍からの連続あらわにする自衛隊】
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沖縄戦の継承≠ェ危ぶまれる事態が進行しているとの報道がある。沖縄の自衛隊基地の増強について、また、米軍基地に関しても、とくに若い世代で肯定的な意見が増えていることがアンケート調査などで顕著になっているという。気になる事態だ。
沖縄戦の最も重要で本質的な教訓は、「軍隊は住民を守らない」「軍隊は住民に銃を向けた」という歴史的事実である。日本軍(第32軍)は沖縄県民を守るためにではなく、一日でも長く米軍を引き留めておくことが目的の「捨て石作戦」を強行。住民の犠牲を省みることは全くなかった。
米軍も同じである。米作家のジョージ・ファイファーは「軍の目的は民間人を救うことではなく、戦闘に勝って領地を得ること」だと断言する。どの国の軍隊であれ、最大の目的は敵軍に勝つこと以外にない。
沖縄戦の継承≠ニは、この歴史的事実を次世代に伝えることである。だが、防衛省・自衛隊がこの歴史的事実に向き合い、検証することは今日に至るまで全くない。むしろ、実相を隠すことに奔走してきた。「自衛隊は旧日本軍とは同じではない」と強調するが、自衛隊と旧日本軍が連続性を持った存在であることを示す動きがこの間、露(あら)わになっている。事例をいくつか挙げる。
▽沖縄の陸上自衛隊第15旅団が、公式サイトで、第32軍牛島満司令官の辞世の句とされる「秋待たで枯れ行く島の青草は 皇国の春に甦(よみがえ)らなむ」(もとは「御国」だったが、軍が「皇国」に書き換えた)を掲載し続けている。
▽第15旅団が牛島司令官の軍服を那覇駐屯地内の広報資料館「鎮守(ちんじゅ)の館」に陳列していたことも判明。この施設では沖縄戦の経過をジオラマと映像、ナレーションで伝える「戦史模型」があり、ナレーションで日本軍を「わが軍」と呼ぶほか、スクリーンには牛島司令官の辞世の句を投影していた(改修中で今年1月時点では、再開するかどうかは「検討中」)。
▽牛島司令官らを弔う黎明(れいめい)之塔(糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園内)に、2004年から21年まで、陸上自衛隊第15旅団の旅団長らが「慰霊の日」早朝に制服で「参拝」してきたことが判明した(問題視され、22年以降は確認されていない)。
▽陸自幹部候補生学校(福岡県久留米市)が、「沖縄作戦において日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得た」と評価し、幹部候補生の教育方針にしていたことが明らかになった―等々。
このような自衛隊の現在の実態を前に、一人ひとりの自衛隊員や軍事増強を肯定する人々にあらためて問いかけたい。「どんな状況でも住民を守るための行動を最優先できますか」
沖縄戦の継承≠フ核心がここにある。
豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会 |
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