2025年08月08日 1882号
【消費者とつながる農家の使命/フェアコープがお米の価格高騰を考える交流会/東京・大田区】
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コメの価格高騰が収まらない。米価は昨年度の2倍に値上がりし、家計の負担は増すばかりだ。
7月20日、「お米の価格高騰を考える交流会〜生産者・販売者・消費者をつないで〜」と題して、オンラインでコメ問題学習会が開かれ、秋田県大潟村の農業者、阿部淳さんと農業ジャーナリストの水樹平和さんが意見を述べた。
主催した大田区フェアコープは、阿部さんがつくる「安全で安くて美味しい」低農薬米を販売する。「令和のコメ騒動」から注文が殺到し、現在は品切れ状態。
その理由を水樹さんは、国が減反政策を続けたことによって、総需要量に対し総生産量が絶対的に不足していることが根本原因とした。さらに、農水省のコメの「民間在庫の推移」を分析。ウクライナ戦争の影響で燃料費、資材費が高騰。価格転嫁できない農家が離農することで、収穫量の低下を招いたことを示した。
阿部さんは、農業に対する国の調査が現場の実態からかけ離れていること、複雑な流通経路、遅すぎた備蓄米放出など、生産者の視点から「実感」を語った。
政府が備蓄米を放出して不足分を穴埋めした結果、少しは価格が値下がりしたが、備蓄米が底をつくのは目に見えている。
阿部さんは、高温障害による今年のコメの品質、収量に懸念を示した。水樹さんはあくまで緊急対策として、飼料用米を主食用米に回す、最低限の輸入枠ミニマムアクセス米の主食用米分の拡大を提示した。
参加者も消費者としてコメ騒動への不安はつきない。国が進めようとする農地の大規模化、農業の企業化についての質問が挙がった。
水樹さんは「国土の7割が山林で平地が少ない日本では現実離れした理論。企業化されると儲からないと途中で投げ出す」と断じる。
農家の厳しい経営状況や阿部さんのお米の価格が「安すぎて大丈夫なのか」との質問に阿部さんは、「現在、安全でおいしいコメを届けるのが、生産者の社会的使命と思い、歯を食いしばって生産を維持している」と語った。
さらに農業政策については「先進諸国の大半の農業は補助金でくらしているようなもの。中小規模の農家でも生産が継続できるよう傾斜配分が必要」と述べる。
水樹さんも同様に「生産者と消費者の両者を満足させる価格政策は難しい。農業者戸別所得補償制度の再導入」を強調した。
阿部さんと直接契約している参加者は、口々に感謝を述べる。
阿部さんは「消費者としては、どこかと契約して年間の必要数量を確保すべき。多少の増減リスクはあるが、お米が主食ならば、政府だけに任せない対応が必要」と消費者と生産者のつながりを提起した。

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