2025年08月15日 1883号

【参政党が会見で記者を排除/外国人差別デマの追及をおそれる/批判にもろい弱点を露呈】

 「日本人ファースト」を掲げ、先の参院選で議席を伸ばした参政党が、神奈川新聞の記者を記者会見から閉め出した。この記者は参政党の参院選候補者によるヘイト発言を批判する記事を執筆してきた。同党が極右の本性を隠したがっていることは明らかだ。

神奈川新聞記者を排除

 ことの発端は参政党が7月22日に参院議員会館で開いた記者会見だった。神奈川新聞の石橋学記者が会場に入ろうとしたところ、党のスタッフに「事前登録していないと参加できない」と断られ、抗議したが結局退席させられた。

 だが、参政党が報道各社に送った案内文のどこを見ても「事前登録が必要」との文言はない。他社の記者が登録の有無をチェックされることもなかった。参政スタッフが石橋記者の取材を拒否するために嘘をついたことは明らかだ。

 神奈川新聞社が「虚偽説明」を指摘して抗議すると、参政党は主張を変えてきた。「記者は参院選の街頭演説で党への妨害行為に関与していた」と述べ、取材拒否を正当化したのである。

 たしかに石橋記者は神奈川選挙区における参政党の選挙活動について数々の批判記事を書いていた。同党の候補者が「外国人が優遇されている」といったヘイトデマをまき散らしていたからだ。参政党は正当な取材活動を「妨害」呼ばわりしているにすぎない。

 実は、別の新聞社の記者も会見への参加を阻止されていた。東京新聞の望月衣塑子記者である。望月記者は参政党の憲法構想案に対する批判的な質問を選挙期間中の囲み取材で神谷宗幣代表にぶつけていた。

 参政党が石橋・望月両記者を記者会見から排除したのは批判的な質問を恐れたからで、公党にあるまじき行為というほかない。新聞労連が「報道の萎縮を狙った圧力であり、市民の知る権利を著しく損ねる行為」(7/25付抗議文)と批判するとおりである。

選挙に乗じてデマ拡散

 前述したように、石橋記者が参政党に取材拒否された背景には、同党の参院選候補者が選挙期間中にふりまいたヘイトデマの問題がある。その人物は元警察官の初鹿野(はじかの)裕樹。神奈川選挙区で最後の議席を公明党現職と激しく争い、競り勝って初当選を果たした。

 初鹿野は街頭演説で「外国人ばかりが生活保護を受給している」「外国人留学生は返済する必要のない給付金1000万円をもらえる」といった事実に反する発言をくり返し、「外国人優遇から日本人ファーストへ」と訴えた。

 また、1937年の南京事件をめぐり、政府が「日本軍による非戦闘員の殺害行為があったことは否定できない」とする答弁書を閣議決定(6/17)したことを批判。自身のXに「南京大虐殺が本当にあったと信じている人がまだいるのかと思うと残念でならない。日本軍は『焼くな、犯すな、殺すな』の三戒を遵守した世界一紳士な軍隊である」と投稿した。

 こうした言動は激しい批判を受けたが、初鹿野は意に介さず、反差別を訴えて集まった市民に対し「ああいうのは非国民ですから」(7/18川崎市内での街頭演説)などと言い放った。オレンジ色のTシャツを着た参政党支持者と見られる人物が、抗議者に「お前ナニ人だよ」「15円50銭って言ってみろ」と詰め寄る様子も確認されている。

 「15円50銭」は、関東大震災直後に官憲や自警団が「日本人判別」のために使用した言葉である。うまく発音できなかった者は「朝鮮人」とみなされ、虐殺された。外国人だけではなく、聴覚障がい者や訛りのある地方出身者も殺された。

 100年前、民族差別にもとづくジェノサイド(集団殺害)が発生した場所で、国政選挙に立候補した者やその支持者が当時と同じ表現で外国人に対する憎悪を煽る―。その危うさに警鐘を鳴らし、批判的報道を行うのはジャーナリズムとして当然の行為である。

 参政党はそれを嫌がり、言論封殺を目論んだ。正真正銘の極右・排外主義者であることを自らの態度で示したのである。

憲法構想にみる本性

 「報道機関は、偏ることなく、国の政策につき、公正に報道する義務を負う」。参政党が掲げる「新日本国憲法(構想案)」の条文である(第16条の2)。特定の記者を排除した今回の行為は、「他者の存在」を認めない彼らの地金が出た結果といえる。

 そして参政党の弱点も今回の一件で露呈した。SNSを駆使した一方的な宣伝は得意でも、面と向かって批判されると説得力のある反論ができないのだ。同党が発信するデマゴギーを徹底的に批判し、神谷らを追及することは極右勢力の伸長を許さぬ有効な手段である。本紙も引き続き行っていきたい。    (M)

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