2025年08月15日 1883号

【『ノー・アザー・ランド』出演者が撃たれ、死亡/激化する違法入植者の暴力】

 7月28日、ヨルダン川西岸南部のマサーフェル・ヤッタ地区で、パレスチナ人活動家がイスラエル人入植者に銃撃され死亡した。殺されたのは英語教師で平和活動家のアワダ・ハサリーンさん(31)。同地区を舞台にしたアカデミー賞受賞作『ノー・アザー・ランド』の制作に協力し、自ら出演もしていた。

 目撃者の証言によると、ハサリーンさんは自身が住む村の土地に重機を伴って侵入してきた入植者を村人と一緒に阻止しようとして、胸を撃たれたという。発砲した入植者は、パレスチナ人に対する暴力行為で米国や英国などの制裁対象になっていた人物だ。

 だが、米国はトランプ大統領の就任に伴い、彼に対する制裁を解除していた。シオニストの暴力を容認するトランプ政権が殺人を助長したのである。

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 ヨルダン川西岸地区では、パレスチナ人に対するイスラエル人入植者の暴力行為が激化している。2025年上半期には820件以上の事件が記録され、昨年比で20%増加した。7月11日には、米国籍を持つパレスチナ人が入植者に全身を激しく殴打され、死亡した。キリスト教徒が多く暮らすタイベ村も襲撃を受け、住宅や車両が放火された。

 パレスチナ人の追い出しを意図した暴力行為が急増した背景には、イスラエル政府の後押しがある。イスラエルの閣僚は今年5月、新たに22か所の入植地を西岸地区に建設することを承認した。7月25日には、同国国会(クネセト)が、政府に対し西岸地区の併合を求める動議を可決した。

 占領地への入植行為は国際法違反である。入植地の実態は植民地にほかならない。イスラエル政府は国策としてパレスチナ人を追放し、土地を我が物にしようとしているのだ。 (O)
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