2025年08月15日 1883号

【井戸川裁判(福島被ばく訴訟) ウソを重ねた最悪判決/「このまま黙らない。さらに怒りまくる」】

 福島原発の立地自治体・双葉町の元町長・井戸川克隆さんが国と東京電力の責任を問うた「福島被ばく訴訟」の判決が7月30日、東京地裁であった。原子力損害賠償法の「無過失責任」原則を理由に東電には超低額賠償を命じるにとどめた上、津波対策や地元自治体への虚偽説明、事故後の対応などにの国の不法行為責任をすべて否定した。

 地震による配管等への影響が争点の一つだったが、判決は根拠もなく「事故は地震動によるものとは認められない」と断定。津波対策については、国の長期評価に基づいて東電が防潮堤を設置したとしても想定外の方向からの海水流入は防げなかった、として国の規制権限不行使を免罪した。

 大きな争点だった低線量被ばくの健康問題についても「100_シーベルト以下では発がんリスクの増加は証明できない。LNT(閾値〈しきいち〉なし)モデルは、放射線防護のリスク管理の観点から採用されており、疾患発症と被ばくとの因果関係の存在を根拠づけるものではない」と切って捨てた。健康被害を個人責任とし、予防措置は不要とする判断で、他の放射能被ばく訴訟にも悪影響を与えかねない。

 井戸川さんが裁判を起こしたのは「町長として、町民が夢と希望を持って生活できるよう、自己犠牲を払ってきたつもりだが、事故ですべてを失った」という痛恨の思いからだ。しかし判決は、原子力災害に関する国の虚偽説明や事前対策の不備についても、原子力災害対策本部の現地対策本部から町と住民が排除された問題についても、ベント実施や避難指示、避難区域の決定、初期被ばく量の測定などに関する問題についても「それで避難状況に顕著な変化が生じたわけではない」などとして原告の主張をことごとく退けた。

 判決直後、井戸川さんは「判決文はほとんどウソ。原発優先の国策に従った最悪の判決だ。原子力行政の欠陥で私たちは避難させられた。よくも裁判長は『国の責任がない』と言い切った。このまま黙らない。私はさらに燃えます。怒ります。怒りまくります」と引き続く支援を訴えた。

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