2025年09月05日 1885号
【パレスチナ人民を守ることは人類を守ること/欧米日で労働組合のネットワークを/UWFPP事務局長サミール・アディルさんに聞く(下)】
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ネタニヤフ政権がガザ制圧計画を決定して以来、米日以外の主要国政府も非難の声を上げている。各国政府にイスラエルを処罰するよう求める全世界の市民・労働者の闘いが必要だ。前号に続き2025ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)に参加したUWFPP(パレスチナ人民防衛統一労働者戦線)事務局長サミール・アディルさんの話を紹介する(まとめは編集部)。

Q.PWSU(パレスチナ労働者闘争ユニオン)の大会(5/17)で何を話したのか
わたしは「パレスチナ問題に関する労働者階級の立場と戦略」を提起した。
トランプ政権の「ガザのリビエラ(観光地)化計画」や「平和は可能」発言を取り上げ、それは資本の論理だと批判した。資本家は「安定と安全」がなければ投資しない。パレスチナ問題を「解決」しない限り、投資できないからだ。
だが、真の平和には占領、国家的不正義の終結と独立国家の樹立が不可欠だ。イスラエルを止める唯一の方法は、石油やエネルギーを止めることだ。スウェーデン、スペイン、モロッコの港湾労働者が港を封鎖した事例を挙げた。軍需産業の労働者がストライキを打つこと。各国政府がイスラエルに責任を取らせることだ。
オンラインでのスピーチだったが、「サミール・アディルとは何者だ」と注目を浴びた。初めてのパレスチナとの公式の接点であり、重要な機会になった。
わたしは、イラク労働者共産党とUWFPPを代表して発言したので、ハマス批判はしていない。UWFPPのメンバーには、ハマスに共感する団体も反対する団体もいるからだ。組織内の調和を保つ必要がある。これはイラクで米軍占領と闘うために組織したイラク自由会議(IFC)の経験から学んだことだ。
Q.UWFPPはどのように運営されているのか
執行委員会は14人。チュニジア、モロッコ、ソマリア、ヨルダン、エジプト、パレスチナの労組代表。イランは政党代表。わたしはイラクの2つの石油労組の代表でもある。
来日前に会議を持った。執行委員会に「海外担当」をつくることになった。欧州の労働組合との間に橋を架けるために必要だからだ。
なぜ、必要か。ZENKOでPWSUのアローシュが発言したことをPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)のウェブサイトに出すと、パレスチナの新聞がそれを記事にした。これは何を意味するのか。PWSUやPPSFのパレスチナ国内での政治的影響力を高めることになり、自治政府改革を前進させる力になる。
だから、特に欧州にUWFPPの海外代表機関をつくることが重要だと考えている。ZENKOやMDSなどの進歩的な組織の見解が、PLO(パレスチナ解放機構)の中に広まっていくはずだ。欧州にはPWSUのメンバーが20人は居る。UWFPPの欧州代表機関ができれば、そこを足掛かりに拡げていける。
PLOは4月の会議後、次の会議を開くことができない。それは、今後の展望を持っていないからだと思う。昨年、北京でパレスチナの諸政党が会議を持った。わたしが「彼らは動かない」と予告したように、ファタハとハマスが権力を争って、受け入れることをしない。統一やガザ統治について、今後の展望を全く持っていないからだ。
Q.日本の運動に期待するものは
ZENKOを足掛かりに、UWFPPへの賛同、参加を日本の労働組合に拡げてほしい。
UWFPPは昨年9月に結成した。パレスチナ支援のためだけに結集する初めての統一戦線だ。唯一の加盟条件は、政府から独立した労働組合であることだけだ。3月のオンライン会議には、世界労働組合連盟(WFTU)中東支部やフランスの連帯労働組合など50以上の労働組合や政党の参加があった。
パレスチナで起こっていることは、メディアが伝えるような「ネタニヤフ政権とハマスの戦闘」ではない。米国を先頭とする帝国主義の利益を守るために、政策として押し付けていることであり、全人類にかけられた攻撃である。パレスナ人民を防衛することは、全人類を守ることになる。ZENKOで議論したように、自分のこととして、イスラエルの犯罪行為を国際連帯で必ず止めよう。
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