2025年09月05日 1885号
【原子力規制委のでたらめ審査で「違法合格」 泊原発再稼働許すな】
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原子力規制委員会は7月30日、北海道電力が申請していた泊原発3号機の規制基準適合審査について「合格」と認めた。事実上の再稼働許可となるが、これは法律・規則に定める条件を全く満たしていない「違法合格」である。当然、再稼働など断じて認められない。

防潮堤がないのに
「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(設置許可基準規則)は、原発の主要施設について「大きな影響を及ぼすおそれがある津波に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」(第5条1項)とする。福島原発事故が津波によって引き起こされた経緯を考えれば当然の規定だ。
泊原発は、審査の過程で既存の防潮堤の機能が十分でないと指摘され、改修か建て直しを指示された。建て直しを選んだ北電は既存の防潮堤を撤去した。2024年3月に始まった防潮堤工事は4割が終わった段階で完成していない。
道内住民らが起こした運転差し止め訴訟で、札幌地裁は2022年5月、「防潮堤がない以上、他の争点については審理するまでもない」として差し止めを認めた。北電が控訴し、今も札幌高裁で審理が続く。
設置許可基準規則は、原子炉等規制法に基づいて規制委が定めたものだ。つまり、今回、規制委は自分で作った規則を自分で破ってまで泊3号機を「合格」させたことになる。
問題部分を対象外に
規制委は、北電に対し、泊原発構内の港を核燃料搬入用に使わせないとの方針を表明した。核燃料輸送用の大型船が衝突して防潮堤が破壊された場合、津波から原子炉を守れなくなるというのがその理由だ。
指摘を受けた北電は、原発敷地内の港から核燃料を搬入するとしていた従来の計画を「原発敷地外に燃料搬入用道路を建設する」と変更した。規制委は「原発敷地外の事項は適合審査の対象外」としてこの計画を追認。審査から外した。
審査の障害になっている部分を対象外にしてまで「合格」させる規制委の姿勢は結論ありきと批判されても仕方のないものだ。
北電は、防潮堤の工事完成を早くても2027年と見込む。規制委の審査が杜撰(ずさん)すぎ、今や「合格=再稼働」ですらない。
原発依存深める北電
脱原発を求める北海道民の民意とは裏腹に、北電はますます原発依存を強める。福島原発事故が起きた11年から24年度の原発への投資額は計6095億円。福島事故前であれば、原発が新規に1基建つといわれた金額だ。一方、同じ期間の再生可能エネルギー(再エネ)投資はわずか54億円に過ぎない。
今回の「合格」対象ではない1号機(1989年運転開始)、2号機(1991年運転開始)はまもなく40年を迎える。これだけの投資をするのは、危険な老朽原発の運転延長を前提にしているということだ。
また、北電は全労働者の約3割を原発部門に配置している。北電の電気料金は全国一高いといわれるが、13年間まったく稼働せず、1ワットの発電もしなかった泊原発にこれだけの無駄なコストを費やせば、高くなるのは当然だ。実際、北電は泊再稼働後も電気料金を引き下げられるかは「わからない」としている。

脱原発は全国的課題だが、北海道には再エネを優先すべき固有の事情もある。季節や時間帯にもよるが、全発電量に占める再エネ比率が4割に達することもあるのだ。しかも、農業が盛んな北海道ではその多くを発電量のコントロールが可能なバイオマス発電が占める。
「発電コストが下がっている再エネに集中投資した方が、電気料金を安価にできる」(松久保肇・原子力資料情報室事務局長)ことは誰もが認める。北海道では再エネをベースロード電源に位置付けできる。
泊原発で過酷事故が起きれば多くの人々の生活と健康だけでなく、農業も破壊され、全国への食料供給も途絶する。泊原発は廃炉しかない。
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