2025年09月05日 1885号

【OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉/「非常戒厳」撤回 ユン大統領罷免/勝ち取った韓国女性のたたかい】

 2025ZENKOに参加した、韓国女性団体連合のヤンイ・ヒョンギョンさんとイム・ソニさんの報告は、歴史的な広場の開催と、ユン大統領の罷免を勝ち取ったことへの自信と希望に満ちあふれていた。

 広場の運営を担い、平和的で誰もが平等に安全に参加できる集会を作り上げたのは、20代から30代の女性たちであった。彼女たちは、これまでも女性に対する性暴力事件やデジタル性犯罪に対する抗議の声を上げてきた。

 ユン大統領は性差別主義者であり、アンチフェミニズム政策を推し進めてきた。「男女の構造的な差別はない」と述べ、性平等政策を担当する女性家族部の廃止を目指していた。また、政策用語から「女性」と「性別平等」の用語を削除することまでも行った。

 女性たちは、ユン大統領の罷免を要求することで「怒りと絶望を超え、新しい民主主義を創造した」。

 女性たちのこうした行動力に比して男性たちは消極的であったといわれている。背景にあるのはユン大統領があおりたてた「女性嫌悪」(ミソジニー)の風潮で、生きづらさを感じている若者の不満を、「女性家族部は逆差別」と言うなどフェミニズムを攻撃することにすり替えてきたことだ。

 また、根強い家父長制度の中で「男子は働いて妻子を養わなければならない」という呪縛がある。さらに、韓国社会も若者世代の失業や不況の長期化が続いており、徴兵制もある中で「男子は損をしている」との不満が、行動する女性に向けられているのだ。

 しかし韓国の女性たちは、「得」をしているわけでも、「楽」をしているわけでもない。ジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム、2025)は、世界で101位。特に経済分野でのギャップは114位で、経済的な男女格差が大きいことを示している。男女の賃金格差は、OECD(経済協力開発機構)加盟35か国のうち最大の31・2% (ちなみに日本は21・3%)の差で、女性が男性より劣悪な状況の中で働いていることがわかる。

 原因は「性的役割の固定化」で、子育て世代女性の非正規労働者が多いことにある。この格差を改善するジェンダー平等政策をこそ、女性たちは求めている。ユンを罷免した市民たちは、「社会大改革」で、差別のない社会を実現する制度的な改善を提言している。

 集会に集まった女性たちのエネルギーに、男女の分断と格差をのりこえていく展望がある。右傾化や男女の格差は日本と共通の課題だ。これからも連帯して取り組んでいきたい。 

(OPEN代表・山本よし子)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS