2025年09月05日 1885号
【団結権を生かし、労働基本権・生存権を守る/分断と差別をなくす労働組合と市民の共闘を/首都圏なかまユニオン総会から】
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一人からでも入れる労働組合、首都圏なかまユニオン。昨年来いくつかの争議を勝利解決に導き、職場・地域単位の組合づくりも前進させた。8月9日に開いた第25回定期総会の議論から一端を紹介する。
労働委 裁判 行動一体で
「ものづくり日本」に憧れて中国から来日し、入社した金属部品メーカーUPT(ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ)傘下の葛ヲ成による労働条件の不利益変更、ハラスメントと闘ってきたLさん。東京総行動にエントリーし、UPTに投資するインテグラル社前でも抗議行動を展開した。また、葛ヲ成が起こした「雇用関係不存在」確認のスラップ=口封じ訴訟で東京地裁は、会社側の請求を却下。Lさんへのセクハラを認定し、損害賠償を葛ヲ成に命じる。これらがテコになって東京都労働委員会を動かし、昨年8月、和解が実現した。
北部支部の田中克治さんは「労働委員会、裁判、背景資本攻めの大衆行動が三位一体となって解決につながった。小さなこともあいまいにせず、徹底的に事実に基づいて追及しぬいた成果だ」。Lさんも「みなさんの協力で解決できた。会社は10年間に3回も投資ファンドの間で転売されている。社員の勤続年数は1〜2年。従業員を使い捨てにする会社は自分の首を絞めることになる」と話した。
大田区に本部がある全港湾(全日本港湾労働組合)の書記として17年勤務し、一方的な不利益取り扱いを受けたKさん。病気療養から復職する際、雇用主の全港湾は「解雇か、給与大幅削減での在宅勤務か」と無理難題を示し、自主退職を狙う。事件は長期化して定年の時期に差しかかり、きわめて劣等な条件の再雇用案を受け入れなかったKさんは再雇用されず、全港湾からも除名された。
「“闘う労働組合”と言われる全港湾を相手に、労働組合である首都圏なかまユニオンが怒鳴り合いの団交を続けた」と南部支部の佐々木透さんは振り返る。団交による解決は無理と判断して都労委申し立てと裁判に持ち込み、6月東京地裁で、全港湾がKさんに謝意と謝罪を表し解決金を支払うという内容の和解をかちとった。組合書記の地位が守られてこそ労働運動は発展する、と裁判所が警鐘を鳴らしたのだ。
百人の組合へ 国際全労
組合員を大きく拡大したのは、ユニオンを上部団体とする国際全労(全国際自動車労働組合)。タクシー大手4社の一つ、国際自動車と8年余の残業代裁判を闘って勝利し(21年2月)、計約4億円の不払い残業代を支払わせた組合だ。
少数組合ながら、今年の春闘でも「生活支援金一律10万円2回支給」などの要求を掲げ、共感を広げた。成果として「未収金」問題の解決がある。決済端末が不調で運賃が回収できず、その後も乗客から送金がない場合、乗務員の賃金から天引きされてきた。労働基準法24条の「全額払いの原則」に明らかに違反する。「やめないなら労基署に通報するぞ」と団体交渉し、会社から4月、「やめる」と回答を得た。
組合員数は23年に32人まで減ったが、25年7月末現在76人に。国際全労執行委員でユニオン運営委員のTさんは「3月に加入した新組合員が『いい組合だ』と同期に呼びかけてくれたことが大きい。20代の若い組合員も増えている。百人の組合をめざし、新たな組合活動の担い手をつくりたい」と決意を語る。
外資系バイオ医薬品会社サイネオスを相手取り、人格否定の誹謗中傷やロックアウト解雇の撤回を求めた争議で都労委は8月7日、組合側の申し立てをすべて棄却する命令を出した。伴幸生委員長は「事実認定が全くおかしい。会社側の主張を採用して『何度も注意処分を受けたが直らない。解雇はやむを得ない』―こんな命令を確定させてはいけない」と今後の取り組みを強化する予定だ。
ユニオンは継続中の争議の「より早く、より高い水準の解決」をめざすとともに、メンタルヘルスケアを必要とする組合員・相談者への支援を強め、生活保護申請に同行するなどアウトリーチの活動も進めていく。

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