2025年09月12日 1886号
【「餓死」か「爆死」か「隷属」か/パレスチナ抹消を加速するイスラエル】
|
「餓死」か「爆死」か「隷属」か。イスラエルがパレスチナ人に突き付けている選択肢だ。ネタニヤフ政権は停戦に応じず、ガザ地区を「飢饉」に陥れた上に爆撃を重ねている。ヨルダン川西岸地区では、大規模な違法入植地建設により領土を奪い取る計画を進めている。パレスチナ国家の樹立を阻止し、パレスチナ人を隷属させようとしているのだ。全世界から怒りの声を。政府はイスラエルを処罰せよ。
「飢饉」と爆撃
ガザ保健当局によれば、餓死者は子ども121人を含む322人(8/29)。日々増えている。国連安全保障理事会15か国中、米国を除く14か国は「ガザの飢饉は人災」と共同声明を発した(8/27)。イスラエルに対し、支援物資搬入制限を即時解除すること、ガザ市制圧の軍事作戦を撤回することを求めた。だが、イスラエル軍は「ガザ地区南部に移動すれば人道支援を受けられる」と「移住」を強要。「飢饉」にあるガザ市の制圧をやめようとしない。
ガザ市だけでなく、その北のガザ地区第3の都市ジャバリアの街は完全に破壊された。「避難しようにもどこに行けばいいのかわからない」と住民は言う(8/27DropSiteNews)。南部に行くにも、深刻な燃料不足で車での移動費用は2000シェケル(約9万円)を超える。避難には移動手段とともに食糧やテントなどの費用が要る。多くの住民は避難したくてもできない。「たとえここで死ぬことになっても、離れない」。飢え死にするか、爆撃で殺されるか、そんな選択を迫られているのだ。
ネタニヤフ政権は、ガザ北部を制圧すれば次は中部へ、そして南部へと破壊し続けるつもりだ。南部の中心都市ハンユニスのナセル病院を爆撃。その被害を記録していたジャーナリストをミサイルで爆殺した(8/25)。戦争犯罪を覆い隠そうとジャーナリストを狙い撃ちしているのだ。一刻も早く止めなければならない。
西岸を分断・併合
西岸地区では、大規模な入植地計画(E1計画)が進行している。パレスチナ国家の首都となる東エルサレムを孤立させ、西岸地区を南北に分断するように、約3400戸の入植者住宅を建設するという。パレスチナ国家を切り刻むこの計画は20年前から画策されていたが、激しい反発を受け凍結していた。
入植地政策の責任者であるスモトリッチ財務相は、E1計画推進を公表した際「(パレスチナ国家構想は)消えつつある」と述べている。スモトリッチは極右「宗教シオニスト党」の党首であり、国際法だけでなくイスラエル国内法でも違反する入植地に住んでいる。元々、国防相の権限であった西岸の統治権を譲り受け、「西岸の総督」として君臨。新たに50万人以上のユダヤ人入植者を送り込む計画を隠さない。
国防相から財務相への統治権の移譲は、イスラエルが表向き維持してきた「占領地の軍事的統治」を「文民総督に割り当てた」ことになり、「西岸の実質的な併合」(赤尾光春『地平』9月号)を意味する。

ただちに処罰せよ
「法の支配」など気にも留めず、「力による現状変更」を地でいくイスラエルをどう処罰するのか。
国連総会の一般討論が9月23日に始まる。「イスラエルの占領政策を1年以内に終わらせる」決議を採択したのが1年前の国連総会だ。日本も含む124か国が賛成した。今回は、パレスチナ国家承認のほかイスラエル批判の決議が議題となることは間違いない。問題は、どこまで実効性のある制裁措置がとれるかだ。
国連安保理14か国の共同声明も効果をあげていない。フランス、サウジアラビアは「二国家解決」にむけ7月末に開催した国際会議の「ニューヨーク宣言」支持を呼びかけるが、イスラエルに対する制裁措置の提案はない。総会初日には米大統領トランプが演説する。イスラエルの犯罪行為を支持、後押しているトランプを厳しく批判しなければならない。ジェノサイドやアパルトヘイトの犯罪を幇助(ほうじょ)する者も同罪だからだ。日本政府は米国政府と同様パレスチナ国家承認さえ表明しない。
パレスチナ占領地の人権に関する国連特別報告者アルバネーゼは「(国連加盟国は)イスラエルとの関係を断ち切り、貿易を断つべき時が来ている」と指摘している(8/26デモクラシー・ナウ)。難しい話ではない。国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルのパレスチナ占領政策は国際法違反と勧告的意見を出したのは1年以上前のことだ。ジェノサイド、アパルトヘイトの犯罪国への武器輸出は禁止されている。加盟国は義務を履行すればよい。
政府動かす怒りの声を
オーストラリアでは、市民の闘いがイスラエル擁護の政府の姿勢を変えた。
8月3日、シドニーでパレスチナ連帯の「史上最大の政治デモ」が行われた。主催者は1万人規模のデモを申請。地元警察はこれを阻止するため最高裁判所に訴えた。判事はぎりぎりまで判断を示さなかったが、デモ参加予想人数が5万人に高まるほどの注目を集め、最終的に警察の訴えを却下した(8/14ニューズウィーク)。当日参加者は30万人にのぼった。
この史上最大のデモから8日後、オーストラリア政府は「9月にパレスチナ国家承認」と発表。これまでの立場を修正するものだ。
市民の行動はさらに広がった。政府にイスラエル制裁を求め、8月24日には全国40か所で、最大50万人が抗議デモに参加した(8/24SBSニュース)。
イスラエル国内でも、8月17日、ネタニヤフ政権の戦争継続政策に反対するストライキ、デモが行われた。テルアビブ「人質広場」に50万人。全国100万人以上が参加した。
ガザでもPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)を含め「即時停戦」を求め座り込みなどの行動が取り組まれている(8/21)。
日本政府にイスラエルと手を切れと迫ろう。国際法を守れと要求する行動を起こそう。



 |
|