2025年09月12日 1886号
【中央・地方最低賃金は今/全県1000円を超えたが全く足りない/今すぐ全国一律1500円以上へ/非正規春闘が異議申し立て】
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8月4日、中央最低賃金審議会は、2025年度の最低賃金について、全国加重平均を63円(6・0%)引き上げる目安を厚生労働大臣に答申した。最も引き上げの目安が高いAランクとそれに次ぐBランクを63円、Cランクを64円とし、下位ランクの目安額を高位よりも引き上げた。これは現行の最賃制度で初めてだ。
目安通りに引き上げが行われれば、全国平均1118円(前年度1055円)と、全都道府県で1000円を超える。とはいえ、労働組合やユニオンが求めてきた「今すぐ全国一律1500円以上」からかけ離れ、政府目標の「2020年代に加重平均1500円を実現する」に必要な年7・3%の引き上げにすら及ばない低水準である。

異例の地方紛糾
これを受けて、8月初めから地方最低賃金審議会の議論が行われているが、例年とは異なる様相だ。
まず、毎年8月末には全県の答申が出そろっていたが、今年は山形、福島、徳島、愛媛、長崎、大分、熊本で労使の合意が得られず9月に持ち越しとなった。これら東北、四国、九州の他の県では目安額を超える答申が出され、それに並ぶように引き上げを求める労働側委員に経営側委員が抵抗する構図となっている。
岩手県は目安64円を15円上回る79円引き上げる1031円を答申。採決時に経営側委員全員が抗議で退席する中、公益委員と労働側委員だけで採決した。63円・64円の目安を超えたのは35道府県。最大は昨年度最下位だった秋田県で、引き上げ幅は80円、答申額は1031円(昨年比8・4%増)となっている。
声上げた非正規春闘
現在、これら地方審議会の答申に対する「異議申し立て」期間だが、非正規春闘実行委員会の異議申し立てが今後の最低賃金引き上げ闘争や賃上げ闘争に向けた多くの示唆を含んでいる。
非正規春闘とは、勤務先が異なる非正規雇用の人たちが一緒に賃上げを求めるもので、3年目を迎えた。今年は134社に一律10%賃上げを要求し、半数以上の企業で有額回答を得た。非正規春闘実行委員会には、個人加入できる31の労働組合が参加。パートやアルバイトなど非正規雇用で働く全国のおよそ4万人が加わる。賃上げの回答は7%が最も高く、全体平均では4%程度になった。
その「異議申し立て」の趣旨は、以下の通りだ。
「最低賃金スライド」実現へ
まず冒頭、中小企業に対する支援策を積極的に議論し、全国一律最低賃金制度を目指して今年度は最低賃金を1500円以上に引き上げるよう要求している。
次に「最低賃金スライド」の実現を政府に要望することを求めている。
官公需(国や地方公共団体との契約)のかなりの部分は3月末〜4月に年間契約金額が決定され、10月改定の最低賃金の上昇分を反映できず下請け事業者の経営が圧迫される場合がある。そこで、最低賃金審議会に対し、官公需契約は契約期間中であっても国や地方公共団体が契約金額を見直すよう要望せよ、としている。
民間企業間の契約では、労務費の増加をすべて価格転嫁させて最低賃金の引き上げ額以上の賃上げを促すことを求める。
最低賃金の引き上げ額がそれ以外の賃金の上昇額を上回っている状況が繰り返されると、最低賃金付近で働く人とそうでない人の賃金格差の縮小をめぐって、労働者内に新たな分断が作り出されかねない。そうならないよう、直接最賃に抵触する労働者だけ上げるのではなく、その他の労働者の賃金を上げ、効果を労働者全体に行き渡らせるよう求める主張だ。
非正規春闘実行委は、これを「最低賃金スライド」の言葉に込めている。
沈黙を強いられてきた非正規労働者が資本に賃上げを要求し、応じない場合はストライキで闘う画期的な運動を作り出した非正規春闘。その闘いを踏まえた、全労働者の立場での異議申し立てなのである。 |
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