2025年09月12日 1886号

【高温 水不足で出来高悪化/安心できる所得保障を/兵庫県豊岡市在住農業者・判田明夫】

 わたしの村でも渇水に苦しむ農家が続出している。全国的な水不足と高温は今年度のお米の供給不足を予想させる。

競争にさらされるJA

 各地のJAが米の概算金(農家からの買取価格)を提示している。どのJAも60`当たり昨年より1万円を上回る2万8千円前後となっている。コウノトリ無農薬米1等のJAたじまの買取価格は60`で4万1千円である。大きな農家にはJA以外の集荷業者から購入契約の働きかけが行われているという。高い概算金を提示しないとJAはお米を集めることができない。

 田に入水した水は出水専用の水路に流れ落とされ、河川に流れ出る。田に散布した農薬が他の田に入らないようにする工夫だ。季節ごとの水管理が定められているが重要な2点だけ紹介する。(1)中干(なかぼし)は田植え後30日ぐらいの苗の分(ぶん)げつ(茎が分かれて数が増えること)が進んだ段階で、10日間ぐらい田の水を切る。イネの根を地中深く伸ばさせ、田んぼの土壌環境を整える(2)出穂後は田んぼを昼間は35度、夜は25度を超えないようにできるだけ冷たい水を流す。水をためっぱなしにしない飽水管理(夕方から水を入れ、朝に水を止める)が理想とされている。田の温度が上がりすぎると乳白米や不稔(受粉しても種にならない)が多くなる。

 出荷検査で乳白米の粒が0・3%を超えると2等米だ。1等米と2等米の価格の差は60`で300円(2024年)。大量の出荷をする米農家にとって2等米との認定は死活問題だ。

7月 降雨が平年の12%

 豊岡市の7月の降水量は平年の12%。用水路の下流では水が来ず、エンジンポンプで水を引き入れる田んぼも出ている。これだけの渇水には分水する(Aの田は夜に、Bの田は昼間に入水という具合)しかない。わたしの渇水しそうな田んぼは上流のOさんが分水してくれている。最下流の田のIさんは「上流のものが使いすぎだ。今年豊作だというような奴は自分勝手なろくでなしだ」とぼやく。半分近い田んぼが休耕地なのにこのありさまだ。

 唐川区には奥池という貯水池と8つの用水路がある。最長の用水路は3kmを超す。貯水池は大正時代森の木も枯れた≠ニいう大干ばつの後、村民が粘土を山の斜面に塗りこみ作ったものだ。田んぼは地域の共有財産であり国民の宝なのだ。

 地球温暖化による農作物の被害は大きくなるばかりだ。農家の所得保障がないと安心して農業を行うことはできないと、強く思う。



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